ニセドの顔、変じゃない?と良ーく見ると、下顎が腫れている。
触ると硬く、外傷らしい外傷も見当たらない。
歯周病かと疑うも、ご飯は普段通り、痛がる素振りもなく食べている。
顎をぶつけたのかしら?
取り敢えず、手持ちの抗生物質を飲ませた。
効果覿面、翌日には腫れは引いていた。
それから10日ほどが経ったろうか。
またまた、ニセドの下顎が腫れ始めた。
再び抗生物質を飲ませたが、今度は効果が見られない。
痛いのか、押入で踞っていることが多くなった。
2、3日様子を見たが、一向に腫れは引かない。
病院で診ていただいたが、考えられる原因は腫瘍か歯周病だという。
ただ、一旦抗生物質で腫れが引いたこと、また急激に晴れたことから、腫瘍は考えにくいとのこと。
歯周病の可能性は大きいが、歯にぐらつきはない。
場所が場所だけに、X線検査をするには、薬剤を投与して体を動かなくさせなければならないので、まずは、抗生物質を10日飲んでみて、ということになった。
大小2種の抗生剤を一日1錠ずつ飲ませ、3日目のこと。
家に帰ってみると、床がいたるところ血に染まっていた。
すぐにニセドを探しに押入を覗いたが、血沫の痕はあれど、姿がない。
どこへ身を隠したのだろう……押入の前で立ち尽くし、隠れそうな場所を思い描いていると、足下で声高にご飯を催促する猫が一匹。ニセドだった。
顎からは、血膿が雫になって落ち、胸も両腕も血に染まってはいるが、腫れ上がっているときより楽になったのか、顔には表多少情が戻っていた。
それでも、この夥しい血膿は何とかしなくては……。
大きなバンドエイドを貼ってみたが、1分ともたない。
先生に連絡すると、出るだけ出してしまいなさい、とのこと。
後でせっせと掃除するとして、自然に任せることにした。
ニセドのご飯皿には、山盛りのご飯と引換に血溜まりが残った。
翌朝、押入に敷いておいたタオルが血染めになっていることを覚悟で覗くと、ニセドの眠気の覚めやらぬ目とぶつかった。
タオルに血の痕跡はまったくない。
いくら拭いても取れなかった腕や胸の血もすっかりきれいになっていた。
顎の下に直径1センチの穴こそ開いているが、腫れも大部引いている。
このリカバリーの早さ、自然に備わった治癒への力を目の当たりにし、畏敬の念と感動で胸が一杯になった。
今日で10日分の抗生物質は全部飲み終える。
ニセドは、人の良さそうな長男顔に戻り、時と所かまわず大きな声でご飯をねだっている。
一体、今回の原因は何だったのだろう。
近々病院へ連れて行こうと思う。