拡大画像
★★★★☆

モモのこねこ

2009年5月 初版第1刷
作:やしまたろう、やしまみつ
絵:やしまたろう
発行所:偕成社
ISBN:978-4-03-202730-3
C8797

書店の店頭…数ある猫の絵本の中で、すっと手が伸び、中身を見ることなく抱きかかえてレジに向かう、そんな本がある。本書はまさにその一冊だった。表紙の猫の絵、それだけで十分だった。帯には『やしまたろう生誕100年記念復刊』とあるが、恥ずかしながら八島氏のことは知らない。だが、表紙画は八島氏について多くを語っているように思えた。
家に戻り、ワクワクしながら表紙をめくる。見返しの絵も期待通り。
いよいよ本編に入る。ところが、ページが進むにつれ、頭の中は?マークでいっぱいになった。絵がストーリーと離れて見える。なぜ、この表現になるのだろう?この絵は、八島氏のどんな背景から生まれてきたのだろう?

八島氏は、東京美術学校時代に軍事教練を拒否したことにより退学処分となる。その後も反戦運動を続け、逮捕・拘留を繰り返す。1939年、日本を逃れるように渡米。1994年に死去するまで、アメリカで創作活動を続ける。絵本では3作がコルデット賞の次席に選ばれている。

原書 Momo's Kitten は、1961年にアメリカで出版され、1981年、岩崎書店より翻訳本が出された。その翻訳本に若干の変更を加えて復刊されたのが本書である。

命は、それぞれに個性を持ち、それぞれの環境の中でそれぞれの生を生き、そして次の命へと繋がっていくことが、たんたんと語られる本書の冒頭には、『どうぶつの おいしゃさんになりたい モモにおくる』とある。本書のカバーに、長女、モモから読者へのメッセージが掲載されているのも、胸にずしりとくる。

『あたらしい太陽』という自伝的絵物語、『さよなら日本ー絵本作家・八島太郎と光子の亡命』と題された評伝があるようだが、八島氏の生きようを知れば、今の私の頭の中の?マークは消えていくのだろうか。


HOME > 猫本 >モモのこねこ