リモージュ・ボックスについて

リモージュは、パリから南南西に260キロ、ヴィエンヌ川のたもとに広がる古い町です。2000年の歴史を誇るリモージュは、ヴィエンヌ県の首都であり、フランス・ロイヤル・ポーセリンの中心地でもあります。

 

秀でた品質の伝統に従って制作されるリモージュ磁器は、窯焚と施釉を何度も繰り返すという労力と時間を費やす工程を経て誕生します。なかでも、1400℃という高温で焼かれる最後の窯焚によって、リモージュ磁器は美しく、強く、白さの際立つ仕上がりとなります。
リモージュ・ボックスの絵付けは、若い女性を中心とした専門家が担当します。その繊細な筆さばきが、リモージュ・ボックスに命を吹き込みます。
絵付け後、さらに窯焚が数回行われ、最後に慎重に金具が取り付けられます。

この一連の工程はすべて手作業ですから、出来上った製品は、一つ一つ微妙に異なり、どれもがオンリー・ワンとなります。しかも、個々のデザインは限定数しか作られず、アーティストまたはアトリエのサインが入ります。リモージュ・ボックスが、珍重され、コレクターズ・アイテムとして広く探し求められる所以はここにあるのです。

 

リモージュ・ボックスの歴史

リモージュ磁器の歴史は1750年代中期に遡ります。ルイ14世統治下の財政担当大臣だったジャーク・トゥルゴーの計らいで、リモージュ市はフランス王国ロイヤル・ポーセリンの独占製造権を獲得したのです。伝説によると、ポンパドール公爵が貴婦人へのプレゼントとして注文したリモージュ磁器の小箱が、リモージュ・ボックスの起源だとされています。細く長い小箱は、当時高価だった針入れとして、丸く平たい小箱はパウダーや嗅タバコ入れとして使われました。しかし、リモージュ・ボックスは、この他にも、さらに素敵でロマンティックな使われ方をしていました。伝言をしのばせた美しい小箱は男女の間を行き来し、たくさんのランデブーの橋渡しをしてきたのです。

 

ナポレオンの妻、フランス帝国の皇后ジョセフィーヌが、繊細なデザインを施したリモージュ・ボックスの蒐集を始めると、この小箱は栄華とファッションのシンボルとなり、フランス貴族がこぞってコレクションにのり出しました。ロシア皇帝が、皇后が子宝に恵まれるようにとの願いを込めて、卵の形をした小箱を ファベルジェに注文したとも伝えられています。

 

今日、リモージュ・ボックスは、世界中でコレクションされていますが、この美しい小箱は、単なるコレクション・アイテムというだけではなく、一つ一つに大切なメッセージが込められています。リモージュ・ボックスは、人生の節目節目−−誕生日、卒業、結婚、赤ちゃんの誕生、等々−−明るく希望に満ちた出来事や、愛する家族やペット、夢中になった趣味、見るものすべてが新鮮だった旅、笑い声に溢れた祝日などを象徴しているのです。リモージュ・ボックスを手に取るとき、そのかけがえのない思い出が蘇ります。

人生のマイル・ストーンとして自ら買い求め、心をこめて家族や友人の贈る−−リモージュ・ボックスは、今もなお、メッセンジャーであり続けているのです。







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