レノックス社の歴史

1889年の会社設立以来、Walter Scott LenoxはLenox社を最高の品質と芸術性、そして美を追求してきました。今日、Lnox社は、世界で屈指の歴史を持つ優良な陶器メーカーとして広く認知され、その製品は、大統領の食卓を飾り、美術館、博物館に展示され、数々の賞を受賞し、そして、全米の多くの家庭で大切に使われています。

創始者、Walter Scott Lenoxは、1859年、『アメリカのスタッフォードシャー』と呼ばれるニュージャージー州トレントンに生まれました。交通網が発達し、燃料と粘土の産地に程近い州都トレントンは、19世紀には200以上の工房を有する陶器の町として全米をリードしていました。そんな中、幼いWalterは、世界一の陶器を作ることに生涯を掛けようと決意したのです。

1875年、Lenoxは、生来のドローイングの才能と粘土に対する情熱に支えられ、トレントンの工房で絵付とデザインの担当として働き始めました。6年後、LenoxはOtt & Brewer社のデザイン・ディレクターに昇進し、続いてWillets Manufacturing社に移籍します。この二社はいずれも、アイルランドのBelleekの国内版を目指していました。Belleek社の陶器は、薄く、真珠のような光沢のクリーム色の肌合いを持っていました。この二社の試みは、結局失敗に終ることになりますが、これがLenoxに自分自身の事業を起こすステージを用意することになったのです。

1889年に創設されたLenox's Ceramic Art Companyは、他のどの工房とも異なっていました。陶器工場というより、アート・スタジオの色彩が強く、一連の商品群を揃える代わりに、光沢のあるアイボリーの土で、一点物のアート作品を生み出していったのです。創設当初わずか18人の職人の手によって作られていたLenox社の花瓶やピッチャー、ティーセットは、その美しいフォルムと見事な彩色によって、にわかに注目を集め、著名なショップの店先を飾るようになりました。1897年には、スミソニアン・インスティテュートに展示されるまでになったのです。

20世紀に入ると、Lenox社はカスタム・デザインの食器を手掛けるようになります。ヨーロッパの陶器メーカーの製品が主流をなす中、William Morley をはじめとするアーティストが生み出すLenox社の食器は大成功を収めました。これを契機に、Lenox社は次第に一連の食器の製造に力を入れ始め、1906年に社名をLenox Incorporated に改めます。従来のセラミック・アートというイメージをさらに広げようという社意の反映でした。もちろん、カスタム・デザインの伝統は今日にも引き継がれています。

アメリカ国内で良質の陶器が求められるのに伴い、Lenox社はカスタム・メイドに加えて、定番のデザインを導入していきます。さらに、Lenox社は、フルカラーのリトグラフィックな絵付けを始めます。この技術により、一点一点に違いのない、絵付けが可能となりました。こうして、Lenox社の陶器は、1918年、ホワイト・ハウスのテーブルを飾るようになったのです。アメリカの陶器メーカーに始めて与えられたこの栄誉でした。

Lenox社の製品の素晴らしいデザインは広く認知されるようになりましたが、それは Frank Graham Holmes の貢献によるものでした。1905〜1954年の長きにわたってチーフ・デザイナーを務めたHolmesは、現代的なスタイルと時代を超えた上品さを見事にブレンドする、類い稀な才能に恵まれていました。Holmesの作品は国内外の数々の賞を総嘗めにしています。

Lenox社は、常に顧客の要望に応えながら発展を続け、現在でも、ホワイト・ハウスはもとより、世界300箇所以上のアメリカ大使館のテーブルを飾っています。そして、メトロポリタン・ミュージアムをはじめとする多くの美術館、博物館の永久展示物となっています。そして、なにより、Lenox社の製品は、多くの人々に喜びと満足をもって使われ、贈られているのです。