バンクーバー猫事情

August 10, 2008 reported by Yoko

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今日は、 陽子さんから寄せていただいたバンクーバー猫事情をご紹介します。陽子さんはバンクーバーに暮らして10年。カレッジで日本語を教えています。
バンクーバーと言えば、トロント、モントリオールに次ぐカナダ第3の都市で、近代的な大都会でありながら、水辺と緑に恵まれた美しい街。5年連続で『世界で住みやすい街』No.1に輝いています。ダウンタウンから30分程で、海、山、森に行ける、まさにナチュラル・シティです。

まずは、陽子さんが暮らす街の佇まいをご覧ください。
緑溢れる伸びやかな住宅街、しっとりとした落ち着きのある街路……そしてオレンジ一色に染まる夕暮れは圧巻です。

気候も穏やかで、夏も日中25℃、夜は12℃前後、しかも湿度が低く、快適そのものとか。猛暑に喘ぐ私達には羨ましい限りですね。
さて、お待ちかね、陽子さんのニャンちゃん、『セサミ』をご紹介しましょう。セサミは2000年に陽子さんの家族になりました。
猫と暮らしたいな、と陽子さんが向かった先は、SPCA (Society for the Prevention of Cruelty to Animals) というアニマル・シェルター。SPCAでは、家のない動物を保護し、里親を探しています。避妊・去勢も無料。陽子さんはここでいくばくかのお金を払って、セサミを譲り受けました。
セサミという名前は、陽子さんが付けたもので、それまでは『スウィーティー』と呼ばれていたそうです。SPCAでは、譲り渡す動物の経歴は知らせないそうですが、スウィーティーという名前から推して、おばあちゃんに可愛がられていたのでしょう。そのおばあちゃんが亡くなってしまったのかもしれません。
陽子さんはせめてもう一匹、と思っていたのですが、セサミが超内気で怖がりな性格……多頭飼いのプランは諦めざるを得なかったようです。
陽子さんに限らず、ワン・ニャンと暮らしたい人のほとんどは、SPCAから譲り受けてくるそうです。日本でも、こうした土壌が早く根付けばいいなあ、と願うばかりですが、やはり歴史の違いを感じずにはいられません。世界初のSPCAは、1822年に制定された動物保護法に基づいて1824年にイギリスで誕生。カナダでは1869年に最初のSPCAが設立されました。現在カナダ国内で69カ所の支部があります。運営資金の大半は、個人・企業からの寄付で賄われているとか。SPCAも、チャリティやPR活動に力を入れています。日本の猫雑誌には、ブリーダーの広告が目立ちますが、動物保護相談センターや動物愛護協会等の存在を、もっと告知していくべきではないかと思います。
こちらの二人は陽子さんの教え子さん。二人とも猫と暮らしていますが、いずれもSPCAから譲り受けてきたそうです。

バンクーバーにはペットショップ自体をほとんど見かけないとのこと。日本のように生体を売っている店はないのでしょう。特定のブリードを欲しい人は、ブリーダーのネットワークや新聞広告を見て買い受けるようです。

SPCAをはじめとするレスキュー団体の地道な活動のお陰で、バンクーバーの街では野良ちゃんはまず見かけないようですが、それでも春先になると仔猫の保護に忙しいとか。何しろナチュラル・シティ、バンクーバーでは、コヨーテが仔猫を狙っているのですから。一戸建てで飼われている猫たちは、裏庭など屋外に出してもらえることも多いようですが、コヨーテの犠牲になることも。
バンクーバーでは、コヨーテの他にスカンクやあらいぐまも住んでいるとか。自然との関わりの広さと深さを感じます。日本の特に都会では、猫は、人と自然との接点のような存在でもあり、何かにつけやり玉に上がるのですが、それは、自然が欠落し、すべてを人為的にコントロールしようとする都会生活が、人の心にまでコンクリートの壁を積み上げてしまっているからかもしれません。
環境対策として緑化が叫ばれ、屋上緑化、壁面緑化等が進められていますが、人の手を最小限に留めた緑こそが、人の心の緑化には必要だと感じます。バンクーバーの街は、私たちが求め、向かう一つの生きた指標です。
陽子さん、レポートありがとうございました。