2005年弥生猫模様 その1(H.17.3.9)

【こえり】
Neco家の家族になった日:2004年7月10日
誕生日:2004年5月頃?
<家族になった経緯>生後8ヶ月のチョコちゃん(?)の初出産で生まれた5匹(?)の長女(?)。会社のビルと隣のビルとのわずかな隙間で、母猫のお乳を弟妹と分け合っている姿を見つけた。
『?』ばかりだ。まず最初の『?』、母親のことだが、チョコちゃんの一族は結束が固く、兄妹4匹が入れ代わり立ち代わり、必ず複数で子猫の面倒を見ていた。しかも、時を同じくして、マーベリックというもう一匹の雌猫(チョコの姉妹)も赤ちゃんを産んでいるから、正直どちらの子供かも分らない。そうは言っても、この子たちと一番多くの時間を過ごしてきたのはチョコだ。
次ぎの『?』、5匹姉弟かどうかだが、はじめて赤ちゃん猫の姿を発見したとき、確かに5匹いたような気がする。グレーが一匹、グレー&白が2匹、白が2匹。それが、いつの間にか4匹しか見えなくなり、最初に見た5匹が幻のようにも思える。
次なる『?』は、『長女』かどうか。発見した当初から一番活発で、眠り続ける弟妹にチョッカイを出して起こしては、一緒に遊んでいた。金網のフェンスに登れたのも、この子一匹だけ。だから、てっきり『長男』だと思い込んでいた。女の子だと判明したのは、Neco家にやって来て、一月も経った頃だろうか。女の子であることに間違いはないが、第一子なのかどうかは想像の域を出ない。
さて、思いも寄らない赤ちゃん猫の出現に、親達の避妊・去勢が最優先課題となり、子猫たちも里親さんを探すつもりで保護することにした。
いつまでもビルの隙間でモゴモゴしている3匹を保護するのは至難の技(何しろ人間が入っていけないのだ)だが、この子は活動範囲が広く、最初に保護できるものと思っていた。ところが、活発ではあっても、2階のバルコニーから覗き込む私たちと目が合うだけで、サッと逃げ出す始末。この警戒心の強さのせいで、Neco家の家族になったのは、最後。階下のステーキ屋さんがお店の中に閉じ込めてくれて、大人4人で大捕り物の末、やっと洗濯ネットの中に保護した。
群を抜いた運動能力といい、見た目といい、先住猫のエリちゃんとトンちゃんに似ていたことから、保護前から、『エリトンちゃん』と呼ばれていたが、女の子と分かって、『こえりちゃん』と改名。
<2005年弥生近況>
Neco家に来て一ヶ月、こえりちゃんは2階のベッドの下で引き蘢り続けた。もっとも、人間の姿のないところでは、ベッドの下を抜け出して、兄妹はもちろん、先住猫とも折り合いよく過ごしていた模様。ここまで警戒され、怯えられた経験のない人間たちは、戸惑うばかりだ。ベッドの下に潜むこえりちゃんを何とかおびき出そうと、毎朝毎晩猫じゃらしを振った。こえりちゃんは猫じゃらしにはじゃれついたが、我を忘れてベッドの下から飛び出すなどというドジは踏まなかった。やむなくご飯をベッドの下に置いて、がっくり肩を落として部屋を後にする。こえりちゃんを里子に出すなど、論外のことだった。
このままでは、オペラ座の美人になってしまう。どうしたものか思案に暮れるある日、ついにこえりちゃんが隠れ家から抜け出し、1階に姿を見せた。やったー!これで安心。だが、それはぬか喜びに終わった。
ベッドの下で暮すことはなくなっても、人と目が合えば逃げ出し、指一本触れさせない。唯一の例外は、先住猫に抱かれてぐっすり眠り込んでいる時だけ。こえりちゃんが気付かずにいるほんの一瞬、背中を一撫ですることができる。それは、Neco家にやって来て8ヶ月経った今でも変わらない。
お陰で、こえりちゃんは避妊はおろかワクチンもできず、こえりちゃんのために用意したカラーも引出しにしまわれたままだ。当然の結果として、すでに2回の発情期を経験している。
安心しきって眠っているときならば、捕まえる可能性がないわけではない。一瞬で洗濯ネットを被せさえすればいいのだ。だが、私たちは、それができずにいる。唯一指を触れられるこの時、警戒を解くたった一つの大切な時間を、悪夢に変えることなど、できようはずがない。一番の裏切り行為のように思えてならないのだ。最初に捕まえたとき、まだ赤ちゃんだったこえりは、キャリーの奥の隅っこで身を固くして座り、目をしっかり見開いていた。その目は私の目からそらされることはなく、「出して、お願い。放して」と切々と訴えていた。あの目はもう見たくない。捕まえるとすれば、次ぎの発情期。自分の身をもてあましている隙を狙うしかない。
こえりちゃんと、どう付き合ったら良いのか、思い倦ねるばかりだが、これまでの8ヶ月の試行錯誤を通して、すべてをこえりちゃんに任せるしかないことを学んだ。こちらから距離を縮めようとすれば、こえりちゃんは後ずさりするばかり。一日も早く信頼を得たいと焦れば、かえって警戒心を募らせる。私たちは、こえりちゃんをそっと、やさしく、ほんの少し離れたところから見守るしかないようだ。下心も、過剰な期待も、持ってはいけない。でも、こえりちゃんが膝に手を掛けてくれる日を夢見ることだけは、許してもらおう。
このように書いてくると、こえりちゃんが、いかにも冷たく、エゴイスティックに映るかもしれない。見た目も、小さな頭の八頭身美人。まだまだ子猫なのに、ぽっちゃりとした愛くるしさはなく、近寄り難い雰囲気を漂わせる。目は、金色でややつり目、細い瞳がきつい印象を与える。真ん丸で大きな黒い瞳をもつNeco家の猫たちの中で、一人異質な存在だ。
だが、見かけに反して、その心の中は、やさしい気配りで溢れている。我が儘で、いばりん坊のニセドが、子猫の人気を一人占めしているらーちゃんを羨ましそうに眺めながら、独寝の淋しさを味わっている時、らーちゃんの傍を離れ、そっとニセドに身を寄せるのは、こえりちゃんなのだ。
こえりちゃんは、『してもらう』ことより、『してあげる』ことを望んでいるように見える。愛情の押し売りをしたがる、私たちを避けようとするのも、そんな気持ちからなのだろうか。こえりちゃんは、Neco家で一番大人なのかもしれない。