『キャラリン』のおうち (H14.12.12)

今年は気候が例年より1ヶ月早い。12月の半ばにもならないというのに、朝、雨戸を開けると一面の雪。12月9日のことだ。
階下に降りると、庇の下で蹲る『キャラリン』と目が会った。これ以上近寄れないほどガラス戸にくっつき、必死にこちらを見ている。雨と違って軽い雪片は風に飛ばされ、軒下にも容赦なく降り込む。『キャラリン』の相変わらずネズミ色に薄汚れ所々束になった毛に、雪片は止まり、融けて水玉となっていた。

一月程前、冬に備えてスリーピングバッグ型のベッドを買い込み、使用方法をガラス戸越しに説明した後、『キャラリン』の側に置いたことがあるが、座ぶとん代わりに乗るだけで、結局使われずに引き上げることとなった。このところ、『キャラリン』はホカロンを挟んだクッションを愛用しているが、これでは雨がしのげない。何とかしようと、犬用のログハウスを注文したばかりだった。ログハウスはまだ届かないが、中に入れる予定の半分屋根がついたペットベッドだけは、持ち帰っていた。その大振りなベッドは、内猫たちの評判も良く、『キャラリン』の物だとも知らず、入れ代わり立ち代わり入っては昼寝を決め込んでいた。そのベッドにホカロンを置き、クッションで覆って、すぐに『キャラリン』ご愛用のクッションの脇に置いた。布製なので、上からビニールを掛ける。「『キャラリン』、ベッドに入ってごらん、風も雪も避けられるし、あったかいよ」とガラス戸越しに繰り返す。何しろ、未だに指一本触れさせない『キャラリン』のこと、抱いてベッドに入れてあげることも叶わない。祈るようなこちらの思いが通じたのか、あまりの寒さに警戒心も凍ったか、『キャラリン』はすぐにベッドの臭いを嗅ぎ始めた。ベッドには内猫たちの臭いが付いている。それを不穏に感じるのか、あるいは他の猫も入ったのだからと安心材料にするのか、と見守る内に、『キャラリン』はゆっくりとベッドに入り、身を落ち着けた。良かった。本当に良かった。

道路の雪も大方融けた昨日、届いたログハウスを組み立てた。Neco家では、なぜか力仕事はnecoがやることになっている。necoが金槌とドライバーを振り回し、ぱぱちゃんが板と板を押さえる。あっという間に立派なログハウスが完成した。表札も付いてきたが、こちらは、ちょっとお預け。いずれトールペイントでも習って、素敵な表札を作ってあげよう。
出来上がったログハウスを持ち上げて、ガラス戸を開ける。ベッドにいた『キャラリン』はさっと身を翻し、物陰に隠れる。neco家でご飯を食べるようになって7ヶ月になんなんとするのに、ガラス戸を開けるたびに、未だにこうして逃げ出すのだ。
うんこらしょ、ログハウスを『キャラリン』のベッドの向こう側に置く。入り口はこちら向き。これなら『キャラリン』はいつでも室内を見ていられる。その中に、『キャラリン』のベッドを入れた。う〜ん、ウッドデッキとマッチして、なかなか素晴らしい。さあ、後は『キャラリン』が無事に入ってくれれば、万事めでたし、めでたし。

そこにやって来たのが、『クロちゃん』。「おお〜?これオレのか〜?」と新築ログハウスを覗いている。「ちゃう、ちゃう、それは御主のではない!!」。『クロちゃん』は今にも敷居を跨ぎそうだが、すんでのところで逡巡している。そこへ『キャラリン』のご帰還。両者ログハウスを背に、無言のうちに、緊張の縄引きをしている模様。しばしの後、『クロちゃん』は引き上げていった。
やれやれ、と安堵のため息をつきながら、『キャラリン』の動向を見守るが、動きなし。「さあ、どうする、『キャラリン』?ベッドはログハウスの中にあるよ」。
今までそこにあったベッドが消え、大きなログハウスが出現したことに、さして驚いた様子もなければ、ログハウスに興味を持った様子もない。何だか拍子抜けしたような思いで、お茶を飲む。

次ぎにガラス戸の向こうを覗いたとき、ログハウスの中には、当然のように寛ぐ『キャラリン』の姿があった。