うん?おしっこ出ない? (H14.9.14)

「ニセドったら、長々とトイレにしゃがんでいたのに、ほんのちょっとしか出てないのよ」とおばあちゃん。
「ウンチ?おしっこ?」
「おしっこ」
「けど、夕べはジャーって音を立てて、洪水になりそうなほどおしっこしてたじゃない」
「でも変な格好だったでしょ。それにトイレから出てくると、必ずオチンチンなめてるのよ。気にはなってたんだけど」
「そう言えば、おしっこを点々としながらトイレから出てきたこともあったよねえ」
お腹を触ってみても、妙な腫れも固さもなければ、痛がる様子もない。いざ、ニセドのトイレを観察しようとすると、皮肉なことに待てど暮らせどトイレに入らない。朝から寝てばかり。ニセドに限らず、1階の住人全員が妙に静かで、2階の住人の鬼ごっこの足音だけが家中に響き渡る。

気になることがある時は、ラブリー先生。後悔はしたくないもの。というわけで、ニセドは急遽先生に診ていただくことになった。道々は毎度の大泣き。ケージを覗いてみると、出す声の大きさとは裏腹に、体はのんびり寛ぎの体勢。みんなと一緒にワクチンの注射に行くときは、車に乗った途端に口を半開きにして「ハア、ハア」と荒い呼吸をしているというのに、今日のニセドは妙に落ち着き払っている。猫密度が低いせいか、自分一人特別扱いされているという、まんざらでもない気持ちがそうさせるのか。

病院に着くとさっそく尿検査。尿道に細い管を通す。necoが前足、看護婦さんが後ろ足、おばあちゃんがお尻を抑えてのことだが、そんなに暴れもせず、おりこうにしているではないか。偉いぞ、ニセド。検査の結果、膀胱炎は起こしていなかったものの、微細な結晶が見つかった。なぜニセドだけ?ニセドはドライフードしか食べない『ぬーちゃん』と違って、どちらかと言うと猫缶派なのに。それでも早めに発見できたので、食餌療法で結晶は解けてしまうだろうとのこと。ほっと胸をなで下ろす。とは言っても、大所帯ではその食餌療法が一番の難関。思案しながら処方食とお薬をいただいて帰宅した。

家では、1階の住人全員がニセドを出迎えた。いつもと違う気配に、心配顔でニセドの顔を代わる代わるなめてあげている。当の本人は、管を入れられたり、いやな思いをしたのに、表情はむしろ明るくなっている。体の不調に内心抱えていた不安がすっかり取り除かれた、というような安心しきった様子だ。人間も猫も一緒なのかもしれない。

さっそくいつも食べているドライフードを片付け、いただいた缶詰めを出してニセドの目の前に置く。ニセドは一回臭いを嗅いだだけで、その場を立ち去る。トンちゃんが興味津々、そのお皿の臭いを嗅ぐ。やはり気に入らないと見え、早く片付けて、としきりに手で隠す動作を繰り返す。結局、だれも目もくれないまま、その缶詰めは手付かずで取り残された。もう一方のドライフードはいやいやながらも何とかニセドの口に入った。取り敢えず一安心。ちなみに、取り残された缶詰めは、気まぐれに家に入ってきたファイトがぺろりと平らげてしまった。歳をとって腎機能が弱まり尿が薄くなったファイトには、結石など無縁なのに。

翌日、ニセドはいつもの快活さを取り戻し、その他1階の住人も、いたずらに、甘えに、お遊びに大忙しだ。昨日の妙な静けさは、ニセドの不安に感染してのことだったようだ。元気が一番と言いながら、おばあちゃんがまた障子貼りをする。