みんな変だぞ (H14.5.7)

復活した『隣の宮沢さん』は、個室から出れば8の字歩行と大泣きを始める。それでも個室に戻して20分もすれば何とか治るので、ご近所に許していただける範囲で、できる限り個室から出すようにしている。また1週間が経ち、再度先生に経過報告。先生もできるだけ薬を使わずにすませたいとお考えのようで、薬を一日置きにすることになった。薬抜きの夜のミルクを飲んで個室に入った『隣の宮沢さん』は、さすがに個室の中でもかなりしぶとく鳴いていた。翌日、朝ご飯の時間に個室から飛んで出てきた『隣の宮沢さん』の耳を触ってみる。熱い!お鼻もからからだ。この日、一日中、いつ触ってもお耳もお鼻も熱かった。8の字歩行の伴奏の大泣きも、以前のようなドズの効いた叫び声になった。個室に入れても泣き止むまでにかなりの時間がかかる。今晩のミルクは薬入り。やはり薬が効いたのだろう、しばらく鳴いた後、眠りについた。夜中に目がさめるのか、二声三声泣き、また眠る。翌朝、ケージから出た『隣の宮沢さん』、耳も鼻も冷たかった。やはり、薬は切れないのかもしれない。

そうこうしている間に階下の猫たちに変調が起き始めた。みんな順番に吐くようになり、『ぬーちゃん』は全く食べなくなってしまった。キッチンに立つおばあちゃんやNecoに、「何かくださ〜い」というおねだりポーズはするものの、何を出してあげても食べない。猫にとって食べないことはとても危険。肝臓に脂肪がたまって致命的な病気を引き起こしてしまう。この際、ローカロリーダイエットなどと言っていられない。大好きなドライフードをこの時ばかりは「ねえ、食べて」と差出す。『ぬーちゃん』はいかにも喜んで食べるような様子で手の中に鼻を突っ込むが、匂いを嗅いでは顔を背けてしまう。6種類くらいのドライフードを次々と試すが、どれもダメ。元々猫缶を食べない『ぬーちゃん』だから、最後の頼みの綱はカニカマだ。これもダメ。ラブリーの先生に診ていただくことになった。熱なし。便が詰まっている様子もなし。取り敢えず吐き気止めの注射をしていただく。お尻に針を刺された『ぬーちゃん』は、「ぼくちゃんに何するんだ〜」とばかりに振り返って先生にガンを飛ばしている。みんな、ピクともしないのに…。家に連れ帰って様子を見ることになった。大きな真ん丸の目がどことなく淋し気だ。ふと『ぬーちゃん』を一人だけにして遊んであげようと思った。みんなのいるところで遊んであげても、他の猫が近くにやって来るとピタリ遊びを止めてしまうからだ。『ぬーちゃん』が一番好きなのは、縄状に撚ったビニール紐だ。紙袋の把手に使われていた紐を外して、『ぬーちゃん』と二人廊下に出る。さあ、キャッチ紐だよ。そ〜れ。階段の上の方に投げ上げる。体調の思わしくない『ぬーちゃん』が嬉々として紐を追う。大きな体で軽々階段を駆け上がり、紐をくわえて下りて来る。おりこう、おりこう。さあ、もう一回。そ〜れ。二人だけのキャッチ紐は、声を聞き付けた『トンちゃん』がドアを開けるまで続いた。紐は『ぬーちゃん』の宝物として、誰にもさわらせず、戸棚にしまった。しまうまで、『ぬーちゃん』は見届けていた。注射のお陰か、『ぬーちゃん』だけの遊びの時間のお陰か、徐々に食べられるようになってきた。ラブリーの先生も心配してお電話をくださった。肝臓に問題があるかもしれないので、状態が良くならないようだったら血液検査をしましょう、と。食べられると言ってもいつもの1割か2割程度だったが、『ぬーちゃん』だけの遊びの時間に期待をかけた。遊ぶ時間に比例するように食べる量が増えていった。4日後、食欲はすっかり戻った。日頃、『ぬーちゃん』をないがしろにした覚えはなかった。それでも活発に走り回る兄姉を、一人ソファーで眺めることが多かった『ぬーちゃん』は淋しかったのだろう。その淋しさは撫でてあげるだけでは拭うことができなかったのかもしれない。背中の毛が立っているのが気になるが、もう少し様子を見てみよう。

ロッキーママが食べない。まるで『ぬーちゃん』と同じように、何をあげても顔を背ける。お顔が一回り小さくなってしまった。あのくりくりの目を悲し気に細めている。おもちゃには子供に帰ったように夢中になるママなのに、大好きな猫じゃらしにも反応しない。ママ、どうしたの?お家に入ってくると、6匹の子供たちに猫パンチを食らう毎日に、ママは小さくなって恐る恐る部屋の隅っこを通るようになっていた。冬の間、心地よく眠った藤のベッドも、気候が良くなり外で過ごす時間が長くなったばかりに、『宮沢さん』に占拠されてしまった。今では段ボール箱が唯一の居場所となっているが、それも留守をしている間に日替わりで誰かに取られてしまう。「ママ、ママ」と声をかけると家に帰ってくるママ。ママの居場所を確保してあげなければならない。ママが家に入ったら、段ボール箱の先客を追い出してあげる。ママは喜んで中に入る。ママに猫パンチをくり出すところを目撃したら、その場で叱る。Neco家にとってママが大切な存在なんだということを分かってもらわなくちゃ。グルーミングもしてあげよう。いつもの3倍ママに気を配って3日。段ボール箱に収まっていたママが、傍にあったバネ仕掛けのネズミのオモチャに猫パンチを食らわせた。そうこなくっちゃ!ママはそうでなくちゃ!

ごめんね、みんなどこかで淋しい思いをしてるんだね。みんな、みんな大切な家族なんだよ。