ややっ、『隣の宮沢さん』復活か! (H14.4.29)

安定剤と個室のトライアルが始まって一週間、一日のほとんどをトロトロと眠り続け、薬が切れるころになると8の字歩行を始めるが、もはや叫ばず、少し「泣く」程度になっていた。それも個室に入れれば治まり、静かで平穏な日々が続いていた。先生に経過報告をしたところ、安定剤を就寝前の一回だけにしてみましょう、ということになった。ご飯を食べる時だけしか起きていないのでは、と思う程寝続ける姿に、不安になっていただけに、薬の量が減らせることは嬉しかった。うまくいきますように!!

今までは朝食のミルクに混ぜていた安定剤のせいで、食後は個室に入ることなくまどろんでいたが、薬抜きのミルクではそうはいかない。『らーちゃん』の朝のカラオケに『隣の宮沢さん』のコーラスが入る。また「叫ぶ」ことを思い出しては元の木阿弥。個室に戻す。不思議と静かになる。また眠ってしまったかと覗いてみると、目をぱっちりあけて、さっぽりとした顔をこちらに向けている。朝から個室に入れっぱなしでは可哀想だが、仕方がない。

おばあちゃんが洗濯物を干す間や、2階のお掃除の時など、そばにいる間はできる限り個室から出してあげることにした。『らーちゃん』に『す〜りすり』してみたり、一緒にペットベッドに収まってみたり。だが、しばらくすると8の字歩行が始まってしまう。そして泣き始める。また、個室に戻す。

個室に入ると落ち着くなら、なぜ自分で入ろうとしないのかしら。落ち着きはするけれど、居心地自体は良くないのかしら。それとも、個室が落ち着くことに自分では気づいていないのかしら。

就寝前のミルクの時間。安定剤入りのミルクの時間。ミルクを持って階段を上る音に、『隣の宮沢さん』は個室の中から歓喜の声を上げる。ミルクをいつもの場所に置いて、個室のドアを開ける。喜び勇んでこちらに、ミルクのそばにやって来るが、ミルクのお皿の他にも『らーちゃん』や『エリちゃん』のお皿が並ぶ中、どれがミルクか分からずにウロウロしている。毎日、毎回、食事の度に目にする光景だが、いつになっても胸が痛む。「ここよ」と指さしても、見えないらしく、わずか30センチの距離を抱いてミルク皿のところに連れてくる。「あった!ミルクだ!」『隣の宮沢さん』はペロリと平らげ、「もうお終い?」という眼差しでこちらの顔を見上げている。「今日はたくさんご飯を食べたでしょ。だから、これでお終い」そう言って、ミルクだらけの顔をタオルで拭う。そのまましばらく様子を見るが、再び8の字歩行の開始。泣き声も以前のドスの効いた声になってきた。まずい!慌てて個室に入れるが、今回はそう簡単に泣き止まなかった。10分経ったのか、20分経ったのか。泣きつかれたのか、諦めたのか、落ち着いてきたのか、安定剤が効いたのか、やがて個室は静まりかえった。1日1回の安定剤が止められる日は来るのだろうか。