ミニ家出 (H14.4.14)

これまで取り立ててお外に興味を示さなかった『エリちゃん』が家出をした。箱入り息子たちが家出をする度に捜索に狩り出される『ファイト』と『お友だち』に加えて、『ロッキーママ』も必死に行方を探す。ただならぬ気配を察して、捜索に参加できない箱入り息子5匹は、庭に面する窓伝いに部屋の中を行ったり来たり。『おばあちゃん』が『白ちゃん』にご飯をあげようと、窓を開けた途端に、飛ぶように外に出て行ってしまったと言う。確信犯的な脱走だった。

 『分家』がやって来て以来、昼間は1階で男兄弟に囲まれて過ごす『エリちゃん』だったが、寝る時だけは寝室に引き取る『ぱぱちゃん』を追うように2階へ駆け上がった。今にして思えば、最近は『ぱぱちゃん』を追わなくなり、『ぱぱちゃん』が抱いて連れて行くようになっていたっけ。夕べなど、2階へ連れていってもらったのに、ドアが開いたすきに1階へ駆け戻ってしまった。男兄弟がくっつきあって眠る中、『エリちゃん』は独りバスケットで眠っていたと言う。その姿が淋し気だと、今朝、『おばあちゃん』が繰り返し言っていた矢先の家出だった。

 『エリちゃん』は、気のおけない兄弟より、女王様気取りでいられる『らーちゃん』の傍がお気に入りだった。『エリちゃん』の一挙手一投足に耳を平らにし、身を低くする『らーちゃん』を、『エリちゃん』は家来のように思っていたのだろう。『らーちゃん』のいる2階が良くて、一日のほとんどを2階で過ごす内に、1階の兄弟たちと遊ぶこともなくなり、最近ではいじめられて泣くこくことも多くなっていた。1階の兄弟にしてみれば、陽のさんさんと射す2階の部屋やベランダに自由に出入りできる『エリちゃん』にジェラシーを感じていたのだろう。

 『分家』の出現は、『らーちゃん』を変えた。頼られることで自分の存在が認められたと感じたのか、近頃の『らーちゃん』にはかつてのオドオドした素振りはなく、頃合を見計らって『分家』を抱いてあげる姿に、落ち着きとゆとりと自信が見えるようになっていた。『エリちゃん』も『分家』に興味がないではないが、誰彼かまわず、『す〜りすり』する『分家』は、まだまだ怖かった。女王気取りをしようにも、『らーちゃん』の傍には『分家』がおり、近寄ることさえままならない。『分家』が寝たすきを見計らって、女王ごっこを仕掛けても、『らーちゃん』は泰然自若に構えていた。『エリちゃん』は家来を失い、『らーちゃん』は新入りの家来を持った。

 『エリちゃん』は2階が面白くなくなった。1階へ降りても、元のような自分の居場所が見つからなかった。家出をした。帰宅した『ままちゃん』が、まるで隠場所を知っていたかのように、探し当てるまで、2時間。ちいちゃな家出、でも必死の家出だった。『エリちゃん』は『ぱぱちゃん』に連れていってもらった2階のベッドで、死んだように眠った。『分家』がぴったり寄り添って足を枕に眠るのもわからず、眠り続けた。『エリちゃん』はどこにこれからの自分の居場所を求めるのだろうか。