2005/12/31

2005年の最後の日を迎えました。
猫三昧4年目も無事に終わろうとしています。
これもひとえに皆様の応援のお陰と、心から感謝申し上げます。
来る年が、みなさまにとって心安く、幸せに満ちた年でありますよう、そしてより多くの猫たちがあたたかい手に抱き取られますよう祈りながら、2005年を過ぎ越そうと思います。

みなさん、ありがとうございました。

2005/12/22 日本中を寒波が襲っています。
雪国の皆様、ご無事でしょうか?
雪に不慣れな土地柄の皆様、転んでいませんか?
くれぐれもお気をつけてください。

ニュ−ス映像で、雪に埋もれた家々を見るにつけ、そこで暮す家のない猫を思い、胸が痛みます。

東京も大寒の寒さですが、会社の外猫たちは皆、元気です。
氷の張りそうな水たまりの上で、ごろりと転がり、お腹を見せて甘えてくれます。
こちらは、慌てて抱き上げて、タオルで背中をせっせと拭いておりますが…。
ついでに乾布摩擦さながらに、体中をごしごしとやります。
異常乾燥のせいか、パチパチと静電気の起きること!

今回の表紙のズレータは、
ワクチン接種のために捕まえたところです。
2005/12/17 この2、3日、仕事が落ち着いてきて、外猫たちをワクチン接種に連れていく時間が作れそうだ。
一番手はタマサ。
お食事セットを詰めたバスケットと一緒にキャリーを持って階下に下りる。
キャリーの蓋を開けて、ちょっと離れたところに置き、何食わぬ顔をして、いつも通りのお食事タイム。
みんなのお皿まできれいに舐め上げたタマサは、キャリーが気になるらしく、蓋にすりすりを繰り返している。
そっとお尻を押してあげるとすんなりキャリーに収まった。
近くの獣医さんの診療は午後2時半からなので、それまでは事務所で時間をつぶしてもらわなければならない。
寒い外より、暖房の効いた事務所の方が居心地がよさそうなものだが、タマサはご機嫌斜め。
いつもの人なつこい表情からは想像もつかないような仏頂面を貼付け、身を岩のように固くしたまま4時間を過ごした。
病院につくと、むしろリラックスしたようで、脂肪を溜め込んだやわらい体に、注射をしていただいた。
「うわあ、これは立派な猫だあ」
「肥満ですよね。でも冬だから……」
「そうだね、寒い冬を乗り切らなきゃならんのだから、まあ、いいでしょう」
タマサの肥満は先生公認となった。
でも、あたたかくなったら、ダイエットしなくちゃ。
2005/12/13 会社の外猫たちが暮すビルの隙間は、人間もカラスも入り込めず、その抜群の安全性で子育てのメッカとなっていた。
だが、現在の4匹が占有してくれているお蔭で、赤ちゃん猫の声を聞かずにすんでいる。
その安全な隙間に、不審なものが出現した。
直径25cmほどのブリキの筒が2本、ニョッキリ現れたのだ。
これ、実は、お隣のビルに最近入ったホルモン焼屋さんの排煙パイプだ。
そのパイプは、1階の天井部分から外に出てきて、地面に向けて斜めに下りている。
まるで、夏のプールで人気のウォーター・ループのようだ。
猫たちは、その突貫工事の音に怯えたことだろう。
パイプを見つけた朝、こちらの敷地の中には、飛び散ったネジ釘が散乱していた。
危ない、危ない!
一本一本拾いながら、猫たちの受難を想った。
せめて、いい臭いくらい、届けてあげてほしいものだ。
2005/12/9 最近neco家では、猫同士の諍いが増えている。
すぐにチョッカイを出すトンちゃんとニセドはもとより、一旦思い込むとなかなか収まらない宮沢さんが、諍いを大きくしている。
レオナとコエリちゃんはエリちゃんを追い回し、お蔭でエリちゃんは日中のほとんどをクロゼットの中に隠れて過ごす。
新入り4匹の体が大きくなり、猫密度の高さも目につくが、偉大なる仲裁役、チビタの不在も大きい。
そんな家の中の空気からわずかでも逃れたいのか、ぬーちゃんが、仕切りと外に出る機会を狙っている。
外に出ると云っても、ほんの1、2分、庭木の臭いを嗅ぐだけで一応満足する。
玄関先の特別室で、気ままに過ごすロッキーママが精神衛生上は最高に恵まれているのかもしれない。

2005/12/4 毎日『おふくろの味』を食卓に並べてくれるおばあちゃんが、体調を崩して寝込んでしまった。
こんなときくらい、と仕事に出かけるまで家中を走り回る。
洗濯、庭の水まき、さささと掃除、ゴミをまとめて、13匹の猫たちのご飯とトイレ掃除。
お風呂に入って身支度完了するまでにぴったり3時間。
運良く(?)プータローとなった息子が家にいてくれるお蔭で、仕事には穴をあけずにすむ。
8時過ぎに帰宅すると、またまた家中を走り回る。

猫たちのご飯の面倒は見ても、人間の食卓にはコンビニのお弁当が並んでしまう。
具合が悪いときくらい、おばあちゃんの傍に居てあげたいが、サラリーマン時代よりはるかに時間も身も自由にならない。
私の代わりに、宮沢さんがおばあちゃんにずっと付き添っている。
他の猫たちも、いつもと様子が違うのが分かるらしく、代わる代わるおばあちゃんの顔を覗き込みに来ては、一舐めしていく。
きっと不安な思いをしているに違いない。
今更ながら、おばあちゃんの有り難さが身にしみる。

それにしても、世の共働きのお母さんたちはスゴイですね!!
2005/11/29 会社の5匹目の外猫になりかかった、大泣きサバトラがこのところ、やって来なくなった。
それと入れ替わるように、コアネちゃんが毎朝皆勤賞。
それまで、コアネちゃんが朝姿を見せるのは、週に2回ほどだったのだ。
推測するに、コアネちゃんが大泣きサバトラの餌場に顔を出していたのではないだろうか。
それならば、とサバトラがこちらのご飯に参加しようとしたに違いない。
それでも、元々の食事の場の方が心地良い。
サバトラは、コアネちゃんに、
「もう来るな。オレもそっちへ行かないからさ」
とでも言ったのかもしれない。
あんなに警戒心の強かったコアネちゃんが、
どんな顔して、あちこちに出没しているのだろう。
ふふふ、笑えるなあ。
2005/11/25 一晩ぐっすりと眠ることができなくなって20年近くになる。
寝付きは悪くないのだが、1時間おきに目が覚めてしまう。
その度にテレビのチャンネルをあちこち回す。
ある夜中のこと、お父さんのベッドで横になっていたエリちゃんが、突然起き出して、テレビに向って足早に歩いていった。
そして画面に身を乗り出して、ペロリとひとなめ。
エリちゃんが舐めたのは、大写しになったお坊さんの頭だった。
涙が出るほど笑ったお蔭で、次の短い眠りはなかなか訪れなかった。
2005/11/20 神社のじん子と会えなくなって久しい。
6月に出逢ったときから、これが最後かもしれない、と思っていた。
それほど、じん子の体は痩せ細り、危う気だった。
だが、次の休みの日も、そのまた次の休みも、じん子はそこに居た。
再会と別れは、4ヶ月も続いた。
雨の多い中、不思議と休みの日だけは、雨粒が落ちることはなかった。
天が、じん子とのひとときをプレゼントしてくれているようだった。
逢うたびに、これが最後と思い、膝のじん子を撫で続けたが、その時間は、決して胸の苦しくなるものではなかった。
やわらかく、おだかやに、時が流れていった。
初めて会うことが叶わなかった日も、次を期待することはなかった。

じん子と入れ替わるように、神社に新顔を見るようになった。
最初は、シンガプーラのような猫。
かがんで呼ぶと、走り寄って来た。
首輪の痕の残る子だった。
次の週は、茶トラの雄がいた。
夕方に出逢ったので、『ユウヒ』と名付けた。
ノラ生活の長そうな子だ。
次の週もユウヒは、神社に居た。
クリちゃんとユウヒがばらばらにご飯を食べる。
ご飯皿を片付けると、私は身をもてあました。
初めてじん子の不在を感じた。
じん子を膝にのせて本を読んだ時間が、もうここにはなかった。
バッグの中の本を取り出すこともなく、満たされない思いで、神社を後にした。
2005/11/16 最近、隣の駐車場の塀の上から、4匹の食事の模様をしきりと眺めている猫がいる。
「おれにも、くれよー」
と、それはそれは大きな声でないていたが、さすがに私が怖かったとみえる。
ご飯のたっぷり入ったご飯皿を見せても、近寄っては来なかった。
それなら、と私は、4匹の食事の後、もう一皿を隅に置いておいた。
ベランダから覗くと、ふむふむ、食べとる、食べとる。
そして今日は、4匹の食事中に姿を現した。
ちょっと離れたところにお皿を置くと、こちらを気にしながらも、食べ始めた。
体格も良く、どこかに餌場を持っているのは違いないのだが、ここの食事風景が気になったのだろう。
あれ、この子、4匹の一族なのかしら???
4匹は、新参者を気にはしても、威嚇することはない。
近寄って、鼻先を突き出したりしている。
もしかして、この子、イケちゃん?
それともチョコ?
それともマーベリック?
2005/11/11 神社のクリちゃんにご飯をあげていると、
エプロン姿の若い女性に、こう尋ねられた。
「もう一匹の猫、見ませんでしたか?」
もう一匹とはじん子のこと。
「宮司さんは、さっきまで居たよ、とおっしゃってたんだけど…」
女性の言葉に、私はほっとした。
私自身、2週続けて会えていなかったのだ。
その女性は、私の前を通り過ぎると、そのまま境内をゆっくり進んで行った。
大木の梢を見上げながら、ゆったりと歩を運んでいく。
神社の静謐な空気が、彼女を繭のように包んでいる。
すべての音が、動きが、ぴたりと止んでしまった空間を、彼女だけが動いているような、不思議な光景だった。
帰りしな、彼女は、こう言った。
「私、木と話すのが好きなんです。」
「あの猫は、私たちと木の間にいるような存在ですよね」
猫ととんと縁のなかった彼女は、じん子に魅せられて、この神社に通うようになったと言う。

あれからさらに2週間…
じん子の姿は見えない。
もしかしたら、木に抱き取られてしまったのかもしれない。
2005/11/6 neco家の猫たちは、みな箱入りだが、エリちゃんはその上を行く。
名付けて『クロゼット入り娘』。
エリちゃんの陣地は2階の寝室だが、東南角のこの部屋は、冬場には絶大な人気を集める。
人間が起き出すと、三々五々猫たちが集り始め、あたたかな陽だまりのできるベッドの上は猫模様のキルトのようになる。

一人が好きなエリちゃんは、我慢するだけ我慢して、堪忍袋の緒が切れるとクロゼットに入れてくれとせがむ。
おとうさんが扉を開けてあげると、大切なスーツをハシゴに、一番上の棚まで上がり、安心して眠り始める。
以前クロゼットに閉じ込められてしまったエリちゃんは、泣きとおして、声を嗄したことがあった。
だが、今はその心配もいらない。
クロゼットを隠れ家にしたエリちゃんは、中から自分で扉を開けて出てくることを覚えたのだ。
休みの日、クロゼットにいるエリちゃんが心配で、幾度となく扉を開けてみたが、その度に、ぐっすり寝入っている姿を見つけ、そっと扉を閉めた。
エリちゃんが自分で出てきたのは、夕方の5時。
ドア開けの名人、トンちゃんでさえ開けられないクロゼットは、エリちゃんにとって、一番快適な場所なのだろう。
猫たちが2階の寝室を敬遠するようになる来年の夏までに、おとうさんのスーツは、何着犠牲になるのだろうか。
2005/11/1 根気良く待てば、心を通わせる糸口が見つかるだろう……そう自分に言い聞かせて1年4ヶ月。
こえりちゃんに掛ける言葉は一際甘く、こえりちゃんを見つめる目はことのほか柔らかく……
でも、もうヤメタ!
一昨日の朝、エリちゃんの陣地、2階に上がってきたこえりちゃんが、エリちゃんを部屋の隅に追い詰め、ガンを飛ばしているのを目撃。
頭を高く保ち、すっくと品良く座ってのガン飛ばしは強烈だ。
エリちゃんは、隅っこにうずくまり、微動だにできずにいる。
こえりちゃんも姿勢を変えず、冷たく固い眼差しをゆるめようとはしない。
私は思わずエリちゃんを抱き上げた。
確かにエリちゃんは、面倒見はよくないが、決して意地悪ではない。
先輩風を吹かせることもない。
それなのに、何たること!
こえりちゃんの真意が全く見えない。
警戒心は異常なまでに強いが、気だては良いと思っていたのに…
私たち人間のへつらうような接し方に、
図に乗ってしまったのだろうか。
もう、イイ!
特別扱いはナシ!
ああ、それなのに
「こえりちや〜ん」
おばあちゃんの超甘い声が聞こえる。
2005/10/28 neco家にやって来たモナコは、見るからに弱々しくて、無事に育つかと心配した。
ムササビのように宙を舞う今のモナコの姿は、想像だにしなかった。
大きな目の、とても小さな顔に、昔の面影は残るが、何しろ、とんでもないイタズラ娘になってしまったのだ。
4匹兄妹の中で、モナコは一人でいることが比較的多かった。
だが、最近は、専らトンちゃんとつるんでいる。
イタズラといえばトンちゃんだから、当然の組み合わせかもしれない。
モナコの師匠がトンちゃんだとしたら、モナコはとっくに師匠を超えている。
トンちゃんが、張り替えたばかりの障子に点々と爪痕を残す間に、モナコは、体もろとも障子に突っ込むという有様だ。
あらゆる扉を難なく開けるトンちゃんは、モナコの出現に刺激されたのか、冷凍庫の扉まで開けるようになった。
しかも夜中にやってくれるから、被害甚大。
お蔭で、一旦溶けて固まりそこねたアイスクリームを食べるはめになった。
元気なのは嬉しいが、なんとも……
2005/10/25 ぬーちゃんがウンチをした途端、お尻から鮮血が飛んだ。
大腸の働きを司る神経に麻痺のあるぬーちゃんは、ますますウンチが出にくくなっている。
まず、痩せること、と言われても、これだけの大所帯だとコントロールは難しい。
そう言い訳してきたが、もはやそんなことは言っていられない。
ぬーちゃんばかりでなく、総じて肥満気味のneco家。
全員で、ドライフードを止めることにした。
ドライフードの器は伏せたまま。
カリカリしか食べなかったぬーちゃんも、お腹が空けば缶詰を食べてくれるだろう。
さあ、根気比べだ。
案の定、ぬーちゃんも、仕方なしなし缶詰を口にした。
だが、一番小さな缶の1/4を食べるのがせいぜいだ。
1日、2日……食べる量のあまりの少なさに、心配がつのる。
素人判断で、こんな極端なことをしてはまずい。
結局、缶詰を食べたあと、小さなお皿に一握りのドライフードを入れてあげることにした。
ドライフードが全く食べられなかったことを思うと、これでも満足らしく、ぬーちゃんは機嫌良く暮している。
新入りと追いかけっこをする姿も見られるようになった。
多少身が軽くなったのだろうか。
2005/10/22 会社の外猫、ホワイトソックスの威厳が失われかけている。
ホワイトソックスは、つねに3匹の安全を守り、一人でいる時に美味しいおやつをもらえば、大声で全員を呼び集め、みんなで分け合う、そんな理想的な保護者だった。
4匹で食べる食事は、家長であるホワイトソックスが一番先に食べ始めた。
ところが、最近、ホワイトソックスのご飯皿に、3匹が入れ代わり立ち代わり、平気で頭を突っ込むようになった。
ホワイトソックスは、その頭を押しのけることもできず、次のお皿にご飯が盛られるのを待つはめになり、結局、最後に盛られるお皿がホワイトソックスのものとなるのだ。
子猫3匹も人間の年で言えば20歳。
成人ならず成猫となると、家長の権威も無視してしまうのだろうか。

外猫の兄弟であるneco家の4匹も似た状況にある。
大きな体をして、相変わらずぬーちゃんの懐にもぐっていく反面、レオナなど、エリちゃんを本気でどこまでも追いまわす。
エリちゃんは「ハーッ」と吹きながら、ひたすら逃げ回る。
大好きなパパのベッドさえ、4匹に占拠される始末。
夜眠る時だけは、パパの腕に抱かれ、幸せそうだが、日中の居場所がなくなってしまった。

刻々と変化する猫社会の力関係は、興味深い。
その中での、それぞれの身の処し方を観察するのは、もっと面白いが、猫密度が高過ぎると感じることも多くなってきた。
2005/10/18 一昨日、使用済み切手がたくさん詰ったパッケージが届きました。
さっそくお礼をと、お名前やアドレスを探したのですが、どこにも記載されていませんでした。
またサイトをご覧いただけることを期待して、この場で御礼申し上げます。
本当にたくさんの切手をありがとうございました。
使用済みの切手やプリペードカードを募り始めて、今年で3年目になります。
年末にまとめて日本動物福祉協会へ送らせていただいておりますが、その量は年々多くなり、今年はもう大きなダンポール箱が一杯になりました。
日本津々浦々から送っていただいた切手の封筒は、とても温かく感じられます。
猫たちへの思いをのせて、一枚一枚切り取ってくださった、その手のぬくもりが、じかに伝わってきます。
本当にありがとうございます。
サイトというメディアを通して、お目にかかったこともない方々のご好意を受けることができ、サイトの作り手冥利に尽きます。
この輪をもっともっと広げ、みんなで、できることを一つずつ、無理せず、根気よく、続け、幸薄い猫たちを一匹でも多く救っていけたら……
みなさん、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
2005/10/15 会社の外猫、ホワイトソックスは、ことのほか警戒心が強い。
食事中も人の気配や聞き慣れない音に過敏に反応し、
一人フェンスの隙間に身を隠す。
それでも、私には多少甘える仕草を見せるようになった。
他の3匹が、私の足に身を擦り付け、座った膝を甘噛みしている間、手が届かない辺りとは云え、ごろりと横になって見せる。
彼なりの精一杯の愛情表現なのだろう。
私は、これまで、彼の取る『間』を尊重してきたのだが、このところ、向こうから不用意に近づくことが多くなってきた。
『間』を縮めるというのではなく、隙あり、という感じなのだ。
そんな時、私は、大急ぎで背中を撫で回す。
さすがにホワイトソックスは身をかわすが、驚いた風でもない。
その微妙な感覚がいい。
ホワイトソックスにご飯をあげるようになって1年4ヶ月。
本当に僅かずつ、ホワイトソックスの心の垣根は低くなっている。

一方、neco家のこえりちゃんは、相変わらずだ。
ちょっと離れて紐を振ると、控えめにじゃれ始めるが、ついつい夢中になる、その一歩手前で、ふと我に返ってしまう。
ご飯を食べていても、人が近くを通るだけで、さっと逃げる。
先日、こえりちゃんが、私の腕に身をまかせ、甘えるだけ甘えている夢を見た。
これが正夢か逆夢か、こえりちゃんしか知らない。
2005/10/11 昨日、おばあちゃんが買い物に行っている間に、大げんかがあったらしい。
居間には白い毛の束が飛び散っていた。
いつも標的になるらーちゃんの顔を覗くと、案の定、鼻に爪痕が伸びている。
相手は、いつもらーちゃんにパンチを食らわしているトンちゃんだろう。
おばあちゃんは、トンちゃんをうんと叱った模様。
ところが、今朝、宮沢さんの目の縁に爪痕を発見。
ケンカの相手は宮沢さんだったのか???
傷から推して、互角の勝負だったかもしれない。
宮沢さんも白いから、飛び散った毛もこの2匹のものだったのだろう。
トンちゃんは、とんだ濡れ衣を着せられたことになるが、日頃が日頃だけに、やむを得ない。
これまでは、誰かがらーちゃんにケンカを売ると、チビタが割って入って仲裁していた。
ああ、そのチビタは、もうここにはいない……
2005/10/8 天国へ旅立ったチビタに、多くの方から優しいお言葉をいただきました。
本当にありがとうございました。
チビタは本当に、本当に幸せ者です。
そして、わたしも……
チビタは、銀糸で織られた素晴らしい布に包まれて、neco家に戻ってきました。
チビタとの3年半をあれこれ思い出すのは、わたしが最期の時を迎えるまで、お預けにします。
今は、天国での再会を信じて、天国行きの切符を手にできるように、日々過ごしていきたいと思います。
これって、愛する者との別れを乗り切る最善の方法かもしれません。
2005/9/30 虫の息のチビタを病院で見舞ったこの日も、神社に出かけた。
じん子は私の呼ぶ声で、走り寄って来たが、その様子がどことなく違う。
ご飯よりだっこ、だったはずなのに、ベンチに座った私の膝など目もくれず、「ご飯ならさっさと出さんかい」と云った様子。
毛艶も良ければ、体もふっくらしている。
食べるだけ食べると、さっさとその場を去り、石垣の上に飛び乗る。
そのつれなさが悔しく、じん子を抱いて、ベンチに戻る。
じん子は寛いだ格好こそしているものの、
いつものゴロゴロは聞かれない。
膝にいるのは、頼りな気にまとわりつくじん子ではない。
ご飯のお礼代わりのお付き合い、といった感じなのだ。
帰ろうとじん子を下ろすと、いつもなら、慌てて膝に舞い戻るのに、今日ばかりは、「はい、さいなら」。
とっとと先ほどの石垣に向って歩み去る。
予想外の応対に、がっかりはしたものの、体調が良く、余裕を取り戻したじん子の後ろ姿に、ほっと胸をなで下ろした。
この命は確かな時を刻み始めたようだ。
2005/9/26 こえりちゃんの発情期がまたも始った。
ごろりと横になり、尺取り虫のようににじり寄るこえりちゃんを、ニューハーフの面々は、またか、といった表情で、そそくさと逃げて行く。
こえりちゃんは、チビタじいちゃんに近寄った。
かまってもらう為には、まずサービス。
チビタの顔を丁寧に舐め続ける。
さあ、今度は、あなたの番よ。
だが、待てど暮せど、チビタはその場に座り続けるだけ。
チビタの病気で、不安と緊張に強ばった胸が、顔が、一瞬ほころぶ。

チビタは、今再び入院中。
一昨晩、また痙攣を越し、夜中に病院に駆け込んだのだ。
痙攣は朝の5時まで続いたという。
それでも、翌日の午後にはご飯を食べ始めたチビタ。
その生命力を大切に支えていきたい。
2005/9/22 チビタが、突然痙攣を起こした。
2、3分で収まったものの、慌てて病院に運んだ。
抗痙攣剤を注射していただき、帰宅。
この薬で、眠くなるはずだったが、チビタは、逆に異常興奮してしまった。
泣きながら歩き回り、ご飯も餓鬼のようにむさぼり食べる。
薬っ気が抜けると、落ち着いたが、起きているときは、ずっと泣くようになってしまった。
頼みの綱のらーちゃんは、4匹の新入りに慕われて、チビタには目が向かない。
そこに現れた救世主が、こえりちゃんだった。
こえりちゃんは、チビタを両腕で抱えるようにして、汚れた顔や目を舐めてあげる。
その何とも言えない感触が、チビタを安心させ、静かな眠りに導く。
チビタは幸せ者だ。
我が家に来たときの不安定な気持ちをらーちゃんに支えてもらい、今度は、こえりちゃんに不安を溶かしてもらっている。
わたしも、こんな支えになれるだろうか。
2005/9/19 家に戻ったチビタの宿題は、毎日輸液に通うことと、病院食1缶をクリアーすること。
決して小さくはない缶だが、何としても食べてもらわなければならない。
スプーンに乗せて口元に運んだフードを自分で食べようとしない場合は、水で溶かして注射器で強制給餌することになる。
注射器で吸い込むことができるほどに溶かすと、一缶のフードはとてつもない量になってしまうから、それも容易なことではない。
真夜中であろうが、チビタが空腹を訴えてなく一声を、私たち家族は待ち望んだ。
チビタは、それを察したように、一生懸命食べようと努力している。
夜中の3時ころを含め、一日3〜4回の食事で、1缶をクリアーしている。
そして、頑張って食べるチビタの様子を、こえりちゃんがそっと見守っている。

だが、このところ、チビタにかかりっきりになっているのを苦々しく思っている子だいるようだ。
だれかが、玄関、居間に抗議のスプレーをしているのだ。
今は、その抗議は甘んじて受け、せっせと掃除をするしかない。
チビタがこの状態を乗り越えられるまで……
2005/9/16

やまない雨はない。万事、塞翁が馬。
悪いことが続けが、今度は良いことが……と気持ちを引き立てていたが、
とどめを刺されたようなことが起きた。
入院中のチビタに残された時間は、あまりないというのだ。
熱が引き、一旦は食事をするようになったのに、再び食べなくなってしまったのを見て、血液検査をしたところ、腎機能がかなり衰えていることがわかった。
加齢によるものだという。
3年前、事務所の階段に姿を見せたチビタは、年齢を推測する鍵となる歯が、交通事故か何かですっかり痛めつけられており、
おおよその見当さえつかなかった。
小振りな体つきと、緑色に輝く一つしかない目を見て、私たちは勝手に生後1年ということにした。
あれから3年半、チビタはまだ4歳半のはずだった。
だが、こうして慢性的な腎機能の衰えから考えると、10歳は足さなければならい。
チビタは、ロッキーママと同じくらいの年齢の、おじいちゃんだった。
このまま入院を続けるか、自宅に連れ帰り毎日輸液に通うか、決断しなければならなかった。
私は、家に連れ帰ることにした。
それが、チビタにとって一番心地よく、心強くあるなら……
猫たちを家族に迎えるということは、その猫たちの『死』を引き受けるということだと、改めて思う。

2005/9/11 コエリちゃんとチビタは9月8日に退院。
ところが、風邪蔓延の責任者、らーちゃんの具合が思わしくない。
服薬でほとんど治っていたのに、ぶり返してしまったのだろうか。
こえりちゃん、チビタと入れ替わるように、らーちゃんが入院した。
退院したこえりちゃんは、食事もできるようになり、どんどん快方に向っている。
だが、チビタはどうも思わしくない。
ほんの僅かしか食べないし、ミルクを飲むのも辛そうだ。
らーちゃんを追いかけるように、チビタが再び入院。
チビタは、やはり40℃の熱があり、口の中もただれていた。
ぬーちゃん、ニセドの通院にはじまり、3匹が入院。
チビタに至っては再入院となった今回の病気騒動。
元気な顔の勢揃いには、もう少し時間がかかりそうだ。
2005/9/8 弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂……悪いことは本当に重なるものだ。
前回も猫たちの病院通いを愚痴ったのだが、実は、コエリちゃんの病院のハシゴの間に、車の右側を走っていた自転車がよろけてしまい、ドスン。
右のフェンダーが引っ込んだ。
その次は、おばあちゃんの口が原因不明のただれを起こし、食事ができなくなった。
予定していた一泊旅行もキャンセル。
さらにさらに、先日の集中豪雨で浸水初体験。
すんでのところで床上浸水は免れたものの、車2台は修理工場行き。
その上、今度はチビタが体調を崩し、入院。
自信喪失、気力消失…………

コエリちゃんは、今日退院するが、この一週間、結局何も口にしなかったそうだ。
家に帰れば食欲も出るだろう、との先生の判断だが、きっとそうだ、とちっとも思えないのが悲しい。
ことコエリちゃんについては、それほど自信がないのだ。
嗚呼……
2005/9/3
ずいぶん、更新が遅れてしまいました。
あれ、まだ更新されてない、とがっかりされた方も多いのでは?
ごめんなさい。
何しろ動物病院通いが続いて……

皮切りは、ぬーちゃん。
以前から便秘傾向のぬーちゃんが、今度ばかりはお尻から血が出てしまったのです。
便は溜まっていなかったのですが、念のためにレントゲンを撮ってみると、思い掛けないことがわかりました。
腰椎と尾骨を繋ぐ当りの関節が先天的に不安定で、それを補おうとバイパスのような骨ができてしまっていたのです。
それが腸を司る神経を圧迫して軽い麻痺を起こしているとのこと。
今は何とかなっても、先々腸の筋肉が衰えてくると『巨大結腸症』になる危険性が高いようで、まずは、真剣に肥満対策に取り組むことになりました。
続いてニセド。
兄弟喧嘩の果てに目を痛めてしまったのです。
角膜は無事だったので、一安心。
さらに、風邪が蔓延。
らーちゃんから新入り4匹に次々うつり、コエリちゃんは入院。
今は、宮沢さんまでもがクシャミを連発しています。

そんなこんなで、HPに穴が開いてしまいました。
季節の変わり目、人間の風邪も流行り始めているようです。
みなさま、くれぐれもご自愛のほど。

2005/8/27 台風11号が上陸しましたが、みなさま、ご無事でしたでしょうか。
被害に遭われました方には、心からお見舞い申し上げます。
地震、台風と、天災が続き、日々の無事の有り難さが身にしみます。

夏休みが終わり、一週間振りで神社のじん子に会いに出かけた。
石のベンチに座っていたじん子は、私の姿を認めるとすぐに立ち上がり、膝に乗る準備をしている。
ご飯よりだっこのじん子だが、こちらとしてはだっこよりご飯だ。
ひざに乗せたじん子の口元に、猫缶のお皿を持って行く。
大好きな猫缶のはずなのに、じん子はぷいと顔を背けてしまった。
「なーるほど、また、手から食べたいのね!」
先週もそうだった。
お皿からは一口も食べず、私の手からは、2缶を平らげた。
猫缶をのせた手を口元に運ぶ。
だが、じんこ子は臭いを嗅いだだけ。
顔を私の腕の隙間に埋めてしまった。
時折、咳き込む。
風邪をひいてしまったのだろうか。
私は、持参したノミ取り櫛でじん子の骨だらけの背中を梳く。
じん子の毛が、櫛の目を厚く埋めていく。
何回梳いても、すぐに櫛の目はふさがる。
悲しいほど、毛が抜ける。
じん子のごろごろは、咳で何度も中断される。
鼻水を拭き、目やにを取ることくらいしかできない。
もう一匹の神社猫、くりちゃんも、ご飯を食べようとしない。
もしかしたら、2匹とも夕食を食べたばかりなのかもしれない。
そう思うことにしよう。
小一時間、膝にのっていたじん子を抱き上げ、ベンチに戻す。
じん子は、立ち去る私の姿をじっと見送っていた。
2005/8/22 今朝、ご飯のバスケットを持った私を迎えてくれたのは、タマサ、ズレータ、そしてホワイトソックスの3匹。
最近、コアネちゃんは、他にもエサ場を見つけたのか、朝は一日おきにしか顔を見せない。
今日もコアネちゃんは欠席かと思っていると、突然、悲痛な猫の叫び声が聞こえてきた。
声の方向がわからず、駐輪場、その向こうの駐車場、塀の隙間、はたまたお隣のビルのベランダへと視線を走らせる。
どこにも猫の姿はない。
まさか、と思いながら、ステーキ屋さんの勝手口に耳を押し付ける。
声の主はステーキ屋さんの店に閉じ込められていた。
ドア越しに聞き慣れた私の声を聞き、必死で助けを求めていたのだ。
折悪しくステーキ屋さんは今日が定休日。
さあ、どうしよう……
こうなったら、大家さんに鍵を開けていただくしかない。
慌てた大家さんは、鍵が見つけられず、結局ステーキ屋さんに来てもらうことになった。
大家さんが、階下に降りてきた時は、残る3匹のお食事中!
ご飯をあげていることは、暗黙の了解とは云え、これは、まずい。
だが、そんなことは言っていられなかった。
「皆さんに可愛がっていただいて……」
その場を取り繕うような私の話に、大家さんは「そう」とにこやかにに相槌を打ってくださったが、次の瞬間、このビルの理事さんの顔に戻り、
「ここは、動物は飼ってはいけないんですから」
としっかり付け加えられてしまった。
大家さんは、私がご飯をあげることを止めないことは百も承知だし、私は私で、大家さんがそれ以上追求しないでくださることを知っている。
ステーキ屋さんが自転車で駆けつけ、勝手口を開けると、コアネちゃんがビックリ箱の蓋を開けたように、飛び出して来た。
一晩中閉じ込められていたというのに、コアネちゃんはそのままご飯皿の前に直行。
何事もなかったかのように、しっかり朝ご飯を食されました。
2005/8/19 残暑お見舞い申し上げます。
宮城県地方にお住まいの皆様には、地震のお見舞いを申し上げます。
このところ、全国でかなり大きな地震が頻発し、不安も徐々に覚悟に変わってきたような気がします。
ああ、でも家に閉じ込められている猫たちを思うと……
お会いする方々が異口同音におっしゃいます。
「その時、家にいたい」と。

一週間のお休みは、怠惰の極地でした。
会社の外猫と神社の猫たちにご飯をあげに通ったくらいでしょうか。
休み前は、本を読むぞ!と張り切っていたのに、ついぞ本を手にすることもなく、だらだらと時が過ぎていきました。
ところが、ひとたび仕事が始ると、いきなりトップ・ギアに入るから不思議です。
これって、とっても猫的???
2005/8/13 夏休みの期間中は、階下のステーキ屋さんと交代で、外猫の食事当番をしている。
いつもは朝晩もらっている食事が、一日一回になってしまうのだが、大目に見てもらっている。
今日は、ステーキ屋さんの当番の日だったが、ちょっとした用事でいつもの時間に出勤した。
空気を抜こうと、ベランダのドアを開けようとすると、ドアの向こうに2匹の猫影が!
ホワイトソックスとズレータが、ドア越しに事務所の中をうかがっている。
どうやら、私がこの事務所の人間と知っていて、食事はどうなっているのか、と様子を見に来たらしい。
思わず吹き出し、声を掛けながらドアを開けたが、さすがに、そそくさと逃げていった。
このベランダなら、雨や寒さをしのぐ小屋を置くこともできる。
また上ってきたときに、見つけられるよう、さっそく見るからに居心地の良い小屋を置いておくことにしよう!

2005/8/4
ニセドの「外へ出せー!」が治まった。
目が覚めている間中、なき続けていたのだから、やれやれ、と胸をなでおろした。
大人しくなったニセドは、どことなく弱々しく見える。
日頃、だれかれ構わず出会い頭に猫パンチを繰り出していたのが祟ったのか、最近は、その仕返しに逃げ惑う有様。
面倒見の良くないニセドをかばってくれる者もなく、一転、哀れを誘うような風情だ。
一昨日、久方振りにニセドが大なきしている。
それも、ただ事ではないような声だ。
びっくりしてニセドの姿を探すと、何とトイレにしゃがんだままないている。
おしっこもウンチも、一向に出る様子がない。
と、突然、堰を切ったように、音を立てておしっこを始めた。
ニセドが去った後のトイレには、噴火口のような穴が開いていた。
まずい、また石が溜まってしまったのか?!
翌朝一番で、病院へ。
案の定、結石が見つかった。
3年前に結石になって以来、これまで再発せず、順調に過ごしてきただけに、晴天の霹靂だった。
症状は軽く、尿道を洗浄し、飲み薬をいただいて帰宅。
最初の結石以来、ドライフードは特に気をつけて選んでいたのに……。
ニセドがなかなくなったのは、体調が悪かったからなのかもしれない。
そして、この結石はストレスの塊なのかもしれない。
2005/7/22 このところ、レオナのおねだりに困り果てている。
「ちょうだいな」とクリクリの目でじーっと見られては、出さないわけにはいかない。
連日おねだりするのは、ネズミのおもちゃ。
例の尻尾に羽のついたネズミだ。
レオナは、そのネズミにご執心なのだ。
レオナは実に上手に遊ぶ。
口で放り投げて、追いかけてみたり、床に置いた私のカバンの中に入れてから、隠れたネズミの待ち伏せごっこをしてみたり。
そしていくら遊んでも、ネズミのおもちゃは新品同様なのだ。
ところが、ゴンちゃんの手に渡れば、あっと言う間にネズミは水の器の中で溺死させられるし、宮沢さんが取れば、一瞬でぺしゃんこに噛み潰される。
いくらネズミが好きなレオナでも、
びしょびしょネズミや、ぺしゃんこネズミは嫌いと見える。
そんなわけで、私の顔さえ見れば、「ちょうだいな」の視線を送り続けるのだ。
チューダースを買い込んだものの、毎晩新品をねだられては、かなわない。
だが、人間嫌いのレオナが、ネズミ欲しさにやって来る姿に、ついついトロリとして、チューダースはどんどん減っていくばかり。
ああ……
2005/7/18 お盆前の日曜日、早朝に出かけたお墓参りで、おばあちゃんが、石の階段を踏み外した。
頭こそ打たなかったが、右半身を思いっきりぶつけた。
幸い骨折はしていなかったが、肋骨の内側にある軟骨を痛めたらしい。
かがんだり、手を伸ばしたりするたびに、痛みが走る。
もっと困るのが、咳やくしゃみだ。
喉がいがいがしても、咳はできない。
咳払いせずに喉のつかえを取ろうとすると、呻きにも似た妙な声を発することになる。
昨晩、ベッドに入ってから、その妙な声を出していると、異常を察知して、宮沢さんが、駆け寄ったきたという。
宮沢さんは、顔をおばあちゃんの顔に擦り付け、両手でおばあちゃんの腕を抱え、声を掛け続けてくれた。
「大丈夫だよ。ぼくがいるからね」
おばあちゃんの耳には、そう聞こえた。
痛みで疲れたおばあちゃんの心が、どれほど癒されたことだろう。
私など、これまでおばあちゃんがしてくれていた雑事の肩代わりで、家の中を走り回るばかり。
ついぞ優しい言葉を忘れていたのに……
2005/7/15 またまた、神社のじん子にご飯をあげに出かけた。
じん子が膝に乗って手のひらのご飯を食べる様子を目にとめたご婦人が思わず足を止めて、猫談義となった。
このご婦人、以前この神社で子猫を拾ったのだそうだ。
エプロンのポケットにすっぽり入る小さな小さな猫は、のどの辺りはかさぶただらけ。
片目がつぶれ、もう片方の目には大きなおできができていた。
ご主人は、この子猫を見るなり、「ずいぶん立派な猫を拾ってきたね」とのたまった。
獣医さんに連れて行くと、まだ小さ過ぎて目の手術はできないとのこと。
力をつけようと、せっせとご飯をあげた。
すると、首のかさぶたも、目のおできも、見る見るきれいになり、つぶれていた目もぱっちり開き、手術など必要なくなった。
時は経ち、ある土曜日のこと。
ご夫妻は、山にドライブに行くことにしていた。
おにぎりを握って、準備万端整え、さあ、猫ちゃんにご飯をあげようと、名前を呼んだ。
いつもなら、飛んでくる猫ちゃんだが、この日に限って姿を見せない。
ようやく探しだして、ご飯の前に連れていっても、匂いを嗅ぐ様子もなく、その場を離れてしまう。
こんなことは、ただの一度もなかっただけに、一人置いて出かけることがはばかられた。
「私、猫が心配だから、今日は行かないわ」
ご主人は、一人で出かけていった。
すると、猫は何事もなかったようにご飯の前に現れ、いつもどおり、ご飯を平らげた。
不思議に思っていると、とんでもない知らせが舞い込む。
ご主人が車ごと崖から落ちて、肩を脱臼、足を骨折。
奥さんは、この猫のお陰で難を逃れた。
ご主人もこのドライブを取りやめていたら、災難に合わずに済んだのだろうが、ご主人が出かけたからこそ、わかった猫の恩返し。
何と言ったらよいのやら……
2005/7/11 エリちゃんが洋服を着ることになった。
洋服を着ると云っても、夜寝るときだけのパジャマだが、願いneco家の猫歴史の中で、洋服を着た猫は初めてだ。
晩酌をしたパパちゃんと、更年期のせいかやたら暑がるnecoのせいで、夏本番を待たず、毎晩エアコンがうなっている。
エアコンはパパちゃんの頭の上にあるから、冷風は、パパちゃんと一緒に眠るエリちゃんをも直撃する。
総じて、neco家の猫たちはエアコンが好きではない。
もっと自然な涼しさを求めて、廊下でごろごろしていたりする。
エリちゃんもそうしたいところだろうが、眠るのはパパちゃんのベッドと決めているらしく、風の届かないところはないかと、あっちこっちに移動し続ける。
タオルを掛けてあげると、そこで落ち着くが、動くたびに外れてしまう。
そこで、パジャマ、ということになった。
嫌がるかと思ったが、とんでもない。
えらくお気に入りだ。
パジャマ自体が嬉しいのか、自分一人だけ特別なことが嬉しいのかは定かではないが。
このパジャマを着て、一晩ぐっすり眠っているはずなのに、朝、見てみると、二本の腕が同じ穴から出ていたり、首と手が同じところから出ていたり。
どうやると、そうなるのか不明だが、それでも満足気に目をさます。
脱いだパジャマは畳んでパパちゃんのベッドのヘッドボードにある棚にしまう。
これでいいのか?????と妙な気持ちだが、正直、かわいいぞ!
2005/7/7 毎週水曜日の休みは、神社のじん子に会いに行く。
あの骨ばった体を思うと、居ても立ってもいられず、朝の6時に神社に出かけたこともあったが、神社は総出で朝のお掃除。
じん子の姿もなかった。
休みの日を待ちわびて、お昼過ぎに飛んで行ったが、その時もじん子は不在だった。
間違いなくじん子に会える時間は夕方5時ということが分かった。
昨日、猫缶を携えて、いそいそと出かけると、何と先客があった。
じん子は、ミルクとなまりをゆっくり、静かに食べていた。
宮司さんの家の前にも大きなご飯皿が並べてあり、私は拍子抜けした。
その人は、この数ヶ月、週3回ご飯をあげに来ているという。
やはり、じん子の骨ばった背中が、足を運ばせるきっかけだったそうだ。
食事を終えたじん子をベンチに乗せようと抱き上げると、じん子は、私の肩にしがみ付いてきた。
そのまま膝に乗せ、背中をさすりながら、その女性と小一時間おしゃべりをした。
聞くも辛い猫の話ばかりだった。
じん子の背中もまだまだゴツゴツ尖っている。
目は拭いても拭いてもじきに目やにが溜まってくる。
瞬膜が目の3分の1を覆い、精気がない。
それでもじん子はゴロゴロと喉を鳴らし続ける。
食事の心配は杞憂に終わったものの、それだけ食べていても、この姿かと思うと、よけいに辛い。
どうしても離れようとしないじん子を、お手水の脇の板の上に下ろす。
そこには、『自由にお書きください』と七夕の短冊を入れた箱があった。
私は、心からの願いを短冊にしたため、祈りながら笹に結び付けた。
家のない猫たちが、あたたかい目で見守られますように……
じん子の後ろで、その短冊が風に揺れた。
2005/7/3 今では、neco家一番の古株となった6匹兄弟の中に、何と、私を恐れている子がいることを知った。
ゴンちゃんだ。
ゴンちゃんはもともと臆病で、仲間と遊ぶこともなく、日がな押入かタンスの上で昼寝をしている。
甘える相手はおばあちゃん一人。
夕食後、ゴンちゃんは決まっておばあちゃんの膝にやって来る。
いつもはテーブルを挟んで『ゴンチ』などと話しかけていたのだが、先日、傍に歩み寄って背中を撫でようとした。
その途端、ゴンちゃんは両耳を平にし、もともとない首をさらに縮め、あげくの果てに脱兎のごとく逃げ出した。
えっ?!もしかして、ゴンちゃん、私のこと怖がってるの?
ゴンちゃんに慕われていると思ってはいなかったが、ここまで露骨に逃げられるとは……ショック!!!
一昨年、ワクチン接種に連れて行く時、ゴンちゃんは恐怖で大パニックになった。
それまで毎年連れて行っていたのに、どうしたことだろう。
幸いパニックに陥ったのは、キャリーに入れてからだったので、その年は、ワクチンを打つことができた。
だが、昨年は追いかける私の気配で何が起こるかを察知したらしく、ひたすら逃げ惑い、結局ワクチンを諦めた。
今年も状況は全く同じだった。
そうか、あの恐怖の元凶は、私なのだ。
ゴンちゃんにとって、私はヤマンバなのだ。
理由は分かっても、やっぱりショックだ。
ゴンちゃんを病院に連れて行こうとする限り、ゴンちゃんが私に気を許してくれる日は来ないのだろう。
かと云って、この役をおばあちゃんにバトンタッチすることはできない。
ゴンちゃんの唯一の甘える相手を奪うわけにはいかないもの。
嫌な役回りだが、仕方がないか……
2005/6/28 昨日の朝から、私の姿を見てズレータが一目散に駆け寄ってくるようになった。
そうだった、ズレータはいつも道路脇まで出て来て、今か今かと私を待っていたんだっけ。
それが、ここしばらくは、タマサやコアネちゃんの後で、お付き合い程度に出迎えていた。
やはり体調が悪かったのだろう。
今朝は、鼻の頭も冷たく湿っていて、朝ご飯もズレータにしては、しっかりと食べた。
食後はちゃっかり他人になってしまう外猫たちの健康状態は、食べるまでのわずかの時間の中で、キャッチするしかない。
出迎え方も大切なシグナルだと改めて気付かされた。
2005/6/24 会社の外猫、ズレータは本当にずれている。
その行動は予測不能。
食事も、途中でぷいっと止めて、ひとり自転車置場で身繕いを始める。
ズレータの食べ残しを、きれいに残飯整理するのは、決まってタマサ。
体調が戻ったコアネも一緒に最後の一粒まできれいに平らげる。
さて食事は終わり、と後片付けを始めると、
ズレータがぬうっと戻ってきて、自分のお皿を眺める。
「あれ、ぼくのご飯、まだあったはずだけど……」
と言いたげな眼差しで、ちらっと私を見る。
そんなズレータだが、このところ食べる量がどんどん減っている。
体もどんどん痩せてきているようで、どうにも気になる。
まったく食べないわけではない。
好き嫌いをしているようにも思えて、手を変え品を変え、あれこれ差し出すのだが、ズレータのお気に入りは見つからない。
かと思えば、以前は見向きもしなかった煮干しをバリバリと食べてみたりもする。
夏に向けて、外猫たちは皮下脂肪を落としているから、ズレータが痩せたのもそのせいかもしれないが、やはり気になる。
今日は、なまりを買い込んだ。
おやつ代わりにあげてみると、食べた!
全部ズレータに食べさせたかったのに、匂いを嗅ぎ付けたホワイトソックスが遠巻きにねだる。
仕方なしに、一カケあげると、今度は、
「おーい、みんなおいでよー。美味しい物があるよー」
と大声でなき、タマサ、コアネまで呼んでしまった。
おかげで、ズレータの取り分は減るばかり。
明日の朝、またたっぷりあげるとしよう。
2005/6/20 このところ、neco家の家猫が外へ出せとがなり立てている。
ニセドは以前から隙を見て脱走し、出せ出せコールを繰り返していたが、これにエリちゃんとぬーちゃんが加わった。
エリちゃんは、昨年やって来た4匹が、当たり前のような顔をして2階のエリちゃんのスペースにやって来る反動だろう。
ぬーちゃんは、ある日、玄関ドアが開いた瞬にのろのろと外に出てしまい、すぐ近くの元ファイトの住居に入り込み、すっかりくつろいでしまったことが引き金となった。
お陰で、出かける時は、気が抜けない。
後ろを確認してドアを開けたはずなのに、どこから現れたのか、音もなく先回りし、わずかの隙間に体をねじ込む。
悲痛な叫びに、ハーネスを付けて一匹を外に連れ出すと、残る2匹がひがむ、やっかむ。
出せ出せコールが治まることはあるのだろうか。
2005/6/16 散歩の度に神社に寄るようになった。
もちろん神社猫に会えるのでは、という下心あってのこと。
先週に引き続き、今週も宮司さんの住まいの塀の上で、二毛が出迎えてくれた。
そして、今回は、もう一匹、三毛がいた。
だが、その三毛は痩せこけている。
「お出で、こっちにお出で」
三毛は素直に、近づいて来た。
目には、目やにが溜まっている。
「どうしたの、こんなに痩せて……」
孫を連れて、同じく散歩に来ていた夫婦も、この猫が気になったらしい。
「手持ちのお菓子をあげてみたんですけど、食べなくて……」
三毛をおとうさんに預けて、私は家に走った。
猫缶2種類とドライフード、器にスプーンを自転車のカゴに放り込んで、神社へ猛烈な勢いで走り戻った。
器に入った猫缶の匂いを嗅いだ三毛は、そっと一口、口に含んだが、それ以上食べようとしなかった。
それがダメなら、こっち、ともう一つの缶を開けてみたが、結果は同じ。
ドライフードも、喉を通らない。
口内炎を患っているようだ。
神社の猫たちを大切にしている宮司さんのこと、食べられさえすれば、こんな姿でいるはずはないのだ。
このまま、やせ細っていくばかりなのだろうか。
キャラリンの姿が思い出されて、切なかった。
三毛は、地面に座り込んだおとうさんの膝に乗っていった。
私は、おとうさんの手のひらに猫缶を一かたまりのせてみた。
三毛は、先ほどと同じように一口食べたが、今度は、二口、三口と食べ進んだ。
手の平が空になる度にフードを足して、結局三毛は一缶半を平らげた。
食べるときの、喉の角度の問題なのだろうか。
食器と空き缶をまとめて、ベンチに腰を下ろすと、三毛は、私の膝に登ってきた。
私は、左手でごつごつの背中を撫で続けた。
三毛は私の右手に顎をのせて気持ち良さそうに目をつぶっている。
これでは、帰るに帰れない。
と思ったとき、宮司さんが仕事から帰ってみえた。
膝の上の三毛は、その気配にさっと膝から降り、宮司さんの後を追いかける。
この三毛、ご近所の飼い猫だそうで、もう随分なお年とか。
宮司さんもご飯をあげてくださっているそうで、「それでは、心配しなくてもいいのかしら?」という私のおかしな問いに、やさしく頷いてくださった。
この三毛を、おとうさんは、『ジン子』と名付けた。
2005/6/12 今朝は久しぶりに青空が広がった。
やれやれ、今日は洗濯物も外に干せる。
できることなら、自分の湿った心も取り出して、洗濯竿に吊るしたい。
雨が降ろうと晴れようと、車通勤をして、日がな事務所の中にいる私には関係なさそうだが、灰色の空が続くと、体調も心の調子もおかしくなるから不思議だ。
気圧が微妙に影響しているのかもしれない。
猫たちも、お天気次第で気分が変わるのだろか。
外で暮らす猫は雨宿りで身動きできず、家の中の猫も、窓が閉め切られ、息苦しいに違いない。
そんな滅入りそうな気分を、猫たちはどう引き立ているのだろうか。
教えてもらいたい。
2005/6/9 会社の外猫たちは、毎朝私に鼻と耳とお腹を触られ、お尻まで覗かれる。
健康のバロメータは、まず食欲、そしておしっこやウンチだが、外猫たちには、残念ながらトイレを用意してあげられないから、おしっこの量や色、ウンちの具合を見ることができない。
尿路結石など心配だが、お腹を触った反応で間接的に知るしかない。
痛がる様子がなければ、良しという訳だ。
下痢をしていないかは、お尻を見ればだいたい分かる。
先日、いつものようにお尻を覗いたら、ズレータのお尻で白い虫が動いていた。
こりゃ大変!!
一番確実に駆除するには注射が一番、ということで、早速キャリーに入れて獣医さんへ向かった。
虫がいる、と云っても具合が悪いわけではないから、ズレータはキャリーの中で大暴れ。
扉の隙間から、腕をすっかり出してみたり、大騒ぎだ。
それでも、縄張りとする地域から離れるに連れておとなしくなり、やがてキャリーの奥に縮こまった。
帰りは、まったくその逆で、扉越しに見える風景に見覚えがあるようになると、再び隙間から両腕を脇の下まで延ばしてくる。
えっちらおっちら、汗だくで運ぶ身にもなってほしい。
家族3匹が出迎える中、キャリーの扉を開けると、ズレータは、猛烈な勢いで逃げ出した。
しばらくは、姿を見せないかと思いきや、ご飯皿を並べる音がすると、慌ててユーターンしてきた。
2005/6/4 家では、欲求不満のニセドが一日中大きな声を張り上げてないている。
面倒見の悪いニセドを慕う猫はなく、その腹いせに、他の猫と出会い頭に猫パンチを繰り出してしるが、欲求不満の原因はやはり外に出られない事。
散歩に連れて行こうと、先日中型犬用のハーネスを買った。
忙しい朝の時間をぬって、外に連れ出す。
慣れないハーネスに、玄関先や駐車場をほふく前進しているが、それでも、四角く切り取られることなく、どこまでも続く空を眺めるのは格別のようだ。
元気のいい植物の中から、気に入ったものを選んで噛んでみたり、蟻や団子虫をじっと観察したり……
本来は、当たり前にできることが、室内猫にとっては特別のご褒美のようなものだ。
一日10時間以上を日の射さない事務所で過ごす私にとって、体の芯から幸せを感じる時間が、朝日を浴びながら洗濯物を干す10分間だということに似ているかもしれない。
2005/5/31 コアネちゃんが今日退院した。
5泊6日と思い掛けなく長い入院になった。
40.5℃という熱は大変な高熱だそうで、肝機能が弱ってしまったのだ。
入院の翌日には熱は大部下がっていたが、何も食べないという。
私の顔を見たからといって、さして助けにはならないかもしれないが、多少は安心して、一口でも食べてくれたら、と毎日面会に行った。
コアネちゃんは、ケージの奥でコチコチに身を固くしていた。
喉を撫でても、背中をさすっても、体は石のようで、気分が悪いのか、多少は楽になっているのか、推し量ることもできない。
入院5日目になっても、何も食べない。
ケージには、日頃好きで食べている缶詰やドライフード、お刺身、ささみを入れたお皿が手つかずのまま、ずらりと並んでいる。
栄養剤も注射しているから、体が弱る心配はないが、これではいつになっても退院できないではないか。
コアネちゃんは相変わらず石になったままだ。
背中を撫でる私の手が、腰に触れた時だった。
身じろぎ一つしなかったコアネちゃんが突然動いた。
頭をケージの底に付け、お尻を高くあげ、甘えるような仕草をしたのだ。
コアネちゃんは、石からマシュマロになろうとしていた。
私は嬉しくて嬉しくて、背中やらお腹やら、体中を両手でさすった。
コアネちゃんも顔を私の手の平に埋めてくる。
30分もの間、私はコエリちゃんを撫で続けた。
私たちの間に同じ血が流れているような一体感に、ケージを閉じることができずにいた。
今日、病院を訪ねると、夕べから突然食べ始めた、と嬉しい報告が待っていた。
そして、退院できることとなった。
帰れることなどつゆ知らず、コアネちゃんは、昨日と同じように私に思いっきり甘えた。
屋根のないお家に帰ったら、コアネちゃんはまた元通り、他人になってしまうのだろう。
一抹の寂しさを感じながら、コアネちゃんの柔らかさを手と胸に刻んだ。
会社ビルに戻ると、自転車置場でタマサが昼寝をしていた。
タマサの目の前でキャリーの扉を開けると、コアネちゃんは猛烈な勢いで飛び出し、5メートルほど離れたところに止まった。
突然のコアネちゃんの帰還に、ぽかんとしていたタマサを、コアネちゃんが必死で呼ぶ。
その声は、危機感とヒステリーがないまぜになった強烈な響きだった。
「そのおばさん、怖い人だから、傍にいちゃダメ!!!」
私にはそう聞こえた。
タマサは状況を飲み込めないまま、私を振り返り振り返り、コアネちゃんのもとへゆっくり歩を進める。
コアネちゃんは、目の前にやってきたタマサと鼻を付け合い、それからこちらに一瞥をくれて、隣のビルとの隙間に消えていった。
2005/5/28 休み明けの木曜日、いつものように会社の外猫たちにご飯を持っていった。
通路で出迎えてくれたのは、タマサとズレータだけだったが、ホワイトソックとコアネちゃんも、ちゃんと食事場所にいた。
『今日のご飯はなあに?』と私の袋を覗く姿は、いつ見てもいとおしい。
だが、この日は、コアネちゃんの様子がおかしい。
いつもなら一番先に、屈んだ私の膝に乗ってくるのに、1mくらい離れた所に座ったままだ。
お皿にご飯を入れても、動く様子はない。
3匹が猛烈な勢いで食べ始めてから、おもむろに腰を上げ、自分のお皿を覗きにやって来たが、匂いを嗅いだだけで、また1m向こうに戻ってしまった。
大好きな缶詰を開けてあげても、同じことの繰り返し。
どうしたというのだろう。
その顔を改めて覗き込み、狐につままれたような気分になった。
どう見てもコアネちゃんに見えないのだ。
「あなた、だあれ?」「コアネちゃんなの?」
コアネちゃんはぽっちゃりと丸顔なのに、今、目の前にいる子は、三角のシャープな顔をしている。
抱き上げてみると、手足もコアネちゃんよりずっと細い。
だが、こうして私に難なく抱かれる猫が新参者のわけがない。
コアネちゃんのはずなのだ。
だとしたら、これは大変、見まがうほど、ゲッソリしてしまったことになる。
一昨日の朝は、元気に食べていたのに……
たった一日でこんなになってしまうものだろうか。
大急ぎで事務所からキャリーを取ってきて、コアネちゃんを入れる。
「気のせいじゃないの?」という回りの声を押しのけ、
診察時間が来るのを待って、獣医さんに駆け込む。
なんと、40.5℃の高熱があった。
そのまま、コアネちゃんは入院となった。
2005/5/24 今年もワクチン接種の時期が到来した。
この1、2年は、一回に2、3匹を連れていくのがせいぜいで、一頃、大型犬用のキャリーに4匹、中位のキャリーに2匹入れて、一回に6匹運んだことが嘘のようだ。
確かに、猫たちの体重は多少は増えたが、それ以上にこちらの加齢によるパワー減退の証だろう。
このペースでは、週一のお休みのたびに獣医さんに通っても、
家の猫13匹と会社の外猫4匹全員のワクチンを終わらせるには、丸々2ヶ月かかることになる。
初回にチビタとトンちゃんを連れて行ったが、チビタは、この機会に歯の治療をすることになった。
歯の治療と云っても、保護した時点でほとんど折れてなくなっていた。
年齢を推測する大きな手がかりの歯がないチビタは、年齢不詳。
体の張りから、高齢ではないだろう、としか分からない。
今回は、折れていた歯の根の除去と、歯石を取っていただいた。
数日間は、化膿止めを服用し、消毒液を注射器で患部に流し込むのだが、チビタは薬入りのご飯をパクパク食べ、注射器を構えると一人で口を開く。
なんと賢い子なのだろう。
口臭が消毒の匂いに替わったチビタの口元を、発情期が終わったコエリちゃんが、一生懸命舐めあげている。
2005/5/20 再びコエリちゃんの発情期到来。
あの独特の鳴き声を聞きつけるたびに、トンちゃんがコエリちゃんに駆け寄っている。
しどけない仕草をキョトンと見つめて、
それでも何かしなくては、とコエリちゃんの首をかじる。
コエリちゃんが泣く、トンちゃんが駆け寄る、その繰り返しに、トンちゃんはほとほと疲れるらしく、いつもの寝付きの悪さはどこへやら。
わずかな時間に、ぐっすり寝入ってしまう。
そう云えば、最初の発情期に面倒を見ていたのは宮沢さん、次がニセドだった。
去勢済みの男どもは、持ち回りでお世話をしているのだろうか。
2005/5/15 シマチュウはとらえどころのない猫だ。
何しろ表情がまったく変わらない。
嬉しいときも、怖いときも、嬉々として遊んでいるときも、寝入る寸前も、まったく同じ顔をしている。
口ほどにものを言うはずの目もまったく同じ色。
これでは、その胸の内を読みようがない。
唯一のサインはゴロゴロだ。
らーちゃんやぬーちゃんに添い寝してもらうときは、部屋中にゴロゴロを響かせる。
方や、人間がやさしく撫でても、ウンでもなければ寸でもない。
人間嫌いというわけではないから、人間に触られて身を固くすることはないが、嬉しくはないらしい。
最近は、体つきまで面白くなってきた。
シャープな三角の顔は健在だが、体がどんどん膨らんで、顔といかにも不釣り合いなのだ。
膨らんで、と云っても堅太りで、抱くとどっしり重たいが、見た目の不釣り合いが辛うじて剽軽な印象を与えている。
無表情の表情を読み解く日は来るのだろうか。
2005/5/12 このところ、エリちゃんがご機嫌斜めだ。
パパが大好きで、帰宅すると玄関に走り出て出迎え、パパの足に顎をのせて、テレビで大リーグ野球を一緒に観戦し、枕を並べて眠るエリちゃん。
だが、最近、玄関に出迎えるエリちゃんの姿がない。
体も一回りスリムになった、というか、痩せてしまった。
男嫌い(パパも男だけど???)のエリちゃんは、こえり、レオナ、モナコの3匹の女の子を迎えて、元気よく遊び回っていたのに……
どうやら、自分のテリトリーである2階に大勢の猫たちが押し寄せるのが気に入らないらしい。
食事もエリちゃんだけ、2階で食べていたのに、その貴重な時間と空間を脅かされているのだ。
エリちゃん御用達のドライフードを入れる音を聞きつけると、信じられない早さでレオナが出没。
エリちゃんの先を越して食べようとする。
お皿は2つあるが、気位の高いエリちゃんは、遠慮のないレオナに気分を害してぷいとその場を離れてしまう。
頭数が増えても、いや、増えれば増えるほど、『自分だけ』の空間や時間が大切になる。
ベッドも食事場所も脅かされているエリちゃんにとって、目下の秘密の場所はパパのクロゼットの中。
滅多に入れてもらえないが、今朝は『特別』だった。
クロゼットの扉を閉めれば、エリちゃん一人のお城の完成だ。
ところが、ところが、パパはエリちゃんをクロゼットに入れたまま出勤。
ああ、お城は牢獄になってしまった。
2005/5/8 今回の連休は、会社の外猫たちの食事の世話を階下のステーキ屋さんにお願いした。
ステーキ屋さんのお休みの日は、私の当番となるのだが、それでもしばらく顔を見ないと思うと、それだけで寂しく、連休初日から、いつも通り朝、会社に出かける始末。
だが、連休後半の3日は、顔を出さなかった。
連休明けの6日、猫たちは、相変わらず通路で私を待っていてくれた。
その前の3日間も、きっとこうして今か今かと私の姿を探していたに違いない。
お詫びの気持ちでカニカマをあげる。
さすがに、私の手から奪うように食べてくれたが、
ズレータは一人無関心。ズレータは、好き嫌いが激しく、猫缶も気に入らなければ一口も食べない。
カニカマの匂いを嗅いで、ぷいと横を向くズレータには拍子抜けしたが、3日振りの再会は新鮮だった。
そんな気持ちは猫たちも同じだったようで、いつもは食事が終わった途端、他人になってしまうコアネちゃんが、食後に私の膝に乗ってきた。
頭を脇の下に埋め、体を胸にくっつけて、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
ゆっくりブラッシングしながら、私もコアネちゃんとの滅多にない一時を楽しんだ。
翌日7日の朝も、私は猫たちのオーバーなほどの歓迎にあった。
さあて、今日もコアネちゃんをだっこしよう、と楽しみに、気持ちいいほどの食べっぷりを眺めていた。
ところが、ところが、食事終了と同時に、コアネちゃんは他人の素振り。
いつものルーティーンに戻った私に、お世辞はいらないらしい。
2005/5/2 3年振りでGWに休暇がとれた。
何をするでもないが、時計を見ずに暮らすことのできる贅沢を味わっている。
ぶらぶらと気の向くままに出かけ、カーテンを買い込んだ。
ロッキーとなっちゃんがカーテンレールをねじ曲げて以来、neco家には、たったの一枚しかカーテンがなかったが、東の窓から差し込む朝の光にnecoの顔はシミだらけとなり、ついに、カーテン復活となった。
12匹の内猫たちは、1枚きりのカーテンには興味を示さなかったから、新調のカーテンもビリビリの憂き目を見ることはないだろう、と踏んで、カーテンを吊る。
だが、新入りの4匹とエリちゃんは、興味津々。
と言っても、カーテンによじ上るわけではない。
カーテンの向こうに入り込み、網戸にちょっかいを出している。
網戸なら今までもあったのに、どういうことだろう。
カーテンの陰に隠れて、人知れず悪戯する喜びを味わっているのだろうか。
今回吊ったカーテンは2階の窓。
網戸を破ったら、地面に真っ逆さまだ。
そんな馬鹿な真似はすまい、と信じたいが……
2005/4/28 会社の外猫たちの様子は、朝のお出迎えでだいたい分かる。
ごく普通の状態なら4匹は通路の中程に座り、道路を眺めていて、私が視界に入るや、走り寄ってくる。
だが、お腹の減り具合によって、座って待つ位置が変わる。
お腹と背中がくっつきそうなほどお腹をすかせているときは、
道路まで出て、今か今かと待っているのだ。

ところが、今朝私を迎えてくれたのは、タマサ一人。
これは、何かあるぞ、と思いつつ、タマサと連れ立って裏手に回り込む。
ズレータとコアネが私を見つけて走ってきたが、ホワイトソックスは、平然と奥に座ったままだ。
近づくと、鳩の羽が10枚ほど散っている。
ホワイトソックスが狩りをし、すっかり食してしまったと見える。
私がお皿を並べて、ドライフードを入れても、我関せず、と立ち上がる素振りすらない。
子猫たち、3匹の食べっぷりから、ズレータもお相伴したと見える。
しばらく前は、ネズミを捕ってきたが、ネズミは目立った傷もなく、事切れていた。
食べる獲物と食べない獲物の区分けはどこにあるのだろう。

私は、残された羽に合掌したものの、何をどう唱えたらよいのか、分からなかった。
2005/4/21 写真家の太田威重さんが、久しぶりに訪ねてくださった。
話題が猫の写真に移り、私は、気になる1枚の話を始めた。
以前、猫通信で紹介した
『猫写真4人展--きままな猫たち』
の案内状に収められていた小西修氏の1枚の写真のことだった。
私の記憶から消えることのなかったこの写真。
ガリガリの小さな体が支える不釣り合いに大きな頭、それでも、その目はきっと前を見据えている。
神々しいほどだ。
だが、この子猫、小西夫妻の介護の甲斐なく、命の炎は消えてしまった。
小西夫妻は、多摩川べりの捨て猫たちの世話を365日欠かすことなく続けている。
彼らが目にする猫の現実は、あまりに悲惨だ。
小西氏は、そんな猫たちをカメラに収める。
太田さんが、小西氏のサイトのURLを送ってくださった。
春の訪れで、外猫の心配もゆるんだ矢先、私の胸は凍り付いた。
どうぞ、一度ご覧になってください。

http://www10.ocn.ne.jp/~kabuto/index.html
2005/4/17 昨年の新入り4匹は、未だゴロゴロと喉を鳴らしたことがない。
らーちゃんやぬーちゃんに引っ付くと、1秒後には大ボリュームのゴロゴロを始めるのに、人に対しては全くのお愛想なしだ。
それが、なんの拍子か、遂にシマチュウが背中を撫でられるままにゴロゴロをプレゼントしてくれた。
そうこなくっちゃ!!
人間たちは、大喜び。
ところが、たった一度のゴロゴロで打ち止めらしい。
その後、いくら猫なで声を出しても、せっせと喉や背中やお腹を撫でても、うんでもなければ、すんでもない。
あのゴロゴロは、春眠の心地よさの中で、人と猫の区別ができなかった結果の大間違いらしい。
ああ……
2005/4/13

私のパソコンはPower Mac.
最初の自前のパソコンを8年前に大枚叩いて買い入れ、翼々年、そのバックアップ用にもう1台購入した。
その2台が時を同じくして壊れてしまった。
1日10時間超、1週6日、つけっぱなしなのだから、寿命と言えば寿命なのだが、パソコンは壊れるもの、という感覚がなかっただけに、ショックだ。
専門家によると、随分と長もちしたようで、大往生らしい。
修理するにも部品がないし、新たにG5を購入することにした。
明日搬入されるが、慣れるまで、しばらく掛かりそうだ。
自宅用にと買っておいた I-book がなかったら、お手上げだった。

ハードが新しくなると、それに対応するソフトも入れ替えなければならないし、懐も頭もともに痛い。
HP作成ソフトも新しくなる。
一旦使えるようになってしまえば、これまでと比べ物にならないページが作れるのだろうが、しばらくは、旧態已然と、i-book にしがみついているかもしれない。
自分の時間が細切れに寸断されていて、じっくりと一つことに取り組む余裕がないのが哀しい。

2005/4/8

昨年子猫4匹を迎え入れ、総勢13匹となって以来、はじめて旅行に出かけた。
13匹では、ペットホテルに預けるのも容易ではないし、猫屋敷と化した我が家は、とうてい人の住む家には見えず、キャット・シッターにお願いするのも憚られる始末。
安心して任せて、という訳にはいかないが、不肖の息子に世話を託して出かけた。
と言っても近場の一泊旅行。
お昼頃出て、翌日の昼前に戻ってきた。

一晩いなかったことで変化が見えたのは、チビタとこえりちゃん。
息子も、チビタだけはちゃんと面倒を見る、と太鼓判を押していたから、お腹を空かせていたわけではないのだろうが、いくら食べさせても、1時間後にはまたご飯をねだる。
お腹をこわすのでは、と心配しながらも、心が満腹するまでご飯を口に運んだ。
こえりちゃんは、心なしか人間の近くにいるようになった。
こちらから近寄れば逃げるのは相変わらずだが、こえりちゃんが作る人間との距離がわずかに縮まったような気がする。
感じ易いこえりちゃんのこと、いつもと違う一晩に、不安を感じていたのかもしれない。
逃げられても、こえりちゃんにとって、私たちは家族なのだろう。

2005/4/1 本業の忙しさに追われて、更新が遅れ遅れになっている間に、コエリちゃんの3回目の発情期がやってきて、過ぎていった。
この機会に、コエリちゃんを捕まえて、獣医さんに連れて行く予定だった。
人間と没交渉を続け、人間に捕まるなど論外のコエリちゃんでも、発情して平常心を失っている時なら、心の傷も多少は浅いのではないか、それに、他に気を取られていれば、捕まえる可能性はぐんと高くなるし…
と考えたわけだが、とんでもない間違いだった。
コエリちゃんは、いつもより格段神経過敏になっていて、目も釣り上がっている。
遠く離れて、こちらに背を向けて眠っていても、そっと最初の一歩を踏み出そうとすると、その気配だけで耳をこちらに向ける。
またも、諦めてしまった。
おとうさん曰く、だれもこれ以上コエリちゃんに嫌われたくないのだ。
ああ……

発情期が去ったコエリちゃんの目には優しさが戻り、せっせとモナコやレオナの面倒をみている。
2005/3/27 「タマサが戻って来ました」
「それは良かったねえ」
「ご心配をお掛けして…」
木曜日の朝、私は近所中を回ってこのやり取りを繰り返した。
この朝は、どうしたことか、通路で私を待つ猫の姿がなかった。
訝しく思いながら裏に回り、4匹の名前を次々に呼んだ。
ズレータとこあねが塀伝いにやって来た。
ホワイトソックスが鳴き声で応えた。
そして、タマサがブロックの土台と金網の隙間から顔を出した。
タマサはいつもなら金網を上ってこちらに降りるのだが、この日に限って、ブロックと金網の隙間から出ようとして、案の定お腹が挟まった。
2日半振りの再会が嬉しくて、挟まって動けなくなっている姿が可笑しくて、私は大笑いしながらタマサの手を引っ張り、抱きとった。
タマサに、旅をしてきたような気配はなかった。
毛並みも汚れていなければ、「帰ってきたよ〜」という高揚した様子もない。
お腹でも痛くて、一人で断食療養でもしていたのだろうか。
いずれにしても、4匹が揃い、食事の光景が収まり良く、明るく映る。
こうでなくっちゃ!!
みなさん、ご心配をお掛けしました。
2005/3/22 昨夕からタマサの姿が見えない。
朝ご飯の時は、いつもと変らず出迎えてくれたのに……。
昨日は月曜、ステーキ屋さんの定休日で、夕食も私が運んだ。
ところが、一番の食いしん坊、タマサの姿がない。
いくら呼んでも、結局現れなかった。
もしかしたら、上階のタマサ・ファンに早い夕食をいただいたのかも、などと考え、自分を納得させていたのだが、今朝もまた、タマサは顔を見せなかった。
さすがに、近くを探しに行った。
公園、神社、駐車場の車の下、ビルの谷間、路地という路地…
だが、タマサの形跡はどこにもなかった。
タマサがいないと、火が消えたようだ。
ホワイトソックス、コアネ、ズレータまでもがバラバラに見える。
「タマサがいないんです」
一体どれだけの人にそう訴えたことか。
何喰わぬ顔で、戻って来てくれるといいのだけれど……
2005/3/18 ジロちゃんの真っ白になった目を見たおばあちゃんは、てっきり失明したものと思い込んだ。
飼い主さんの許可がなくても、お医者さんに連れていかなくては。
そう考えつつ、抗生物質入りのご飯をあげ続けた。
その晩、私が帰宅すると、ジロちゃんはまたも玄関先にいた。
相変わらず具合が良くない証拠。
恐る恐る、その目を覗くと、なんと、元に戻っている。
奇跡はあっけなく起こった。
人一倍重傷になるが、薬効著しいのも人一倍だ。
やれやれ……
ほっと肩をなでおろして家に入ると、珍しく仮面君が庭先でご飯をねだっていた。
仮面君がこの前やって来たのはどれほど前だろうか。
首にピンクのリボンを巻いている。
思えば、キャラリンを連れて来たのも仮面君だった。
そのキャラリンはもういない。
仮面君はピンクのリボンに似つかわしくない、でっかい顔をガラス戸につけて、しきりにご飯をねだる。
neco家の面々は仮面君を忘れたのか、背中の毛を立てて窓越しに睨みをきかせる。
だが、仮面君の声に一早く反応したのは、ジロちゃんだった。
ドスのきいた唸り声が、仮面君の妙に甲高い鳴き声にかぶさる。
仮面君も、ご飯どころではなくなり、裏手から玄関に回っていった。
この時期特有の抑揚のある雄猫の声が、夜の闇を切り裂く。
ジロちゃんは、またしても深手を負うのだろうか。
2005/3/13 御近所の飼い猫であり、neco家の通い猫でもあるジロちゃんが
またもや深手を負った。
鼻の頭が擦り剥け、口の脇が切れている。
またか!でも、この程度で済んでよかった……というのは、とんだ勘違いだった。
翌日、珍しく玄関先の特別室の一つで死んだように眠っているジロちゃんが、ご飯の臭いを嗅ぎ付けて、ノコノコ起き出してきた。
その顔は、前日までとは大違いで、両耳の下がパンパンに腫れている。
ジロちゃんは、ちょっとの傷でもすぐに化膿するが、またまたばい菌が入ってしまったと見える。
痛く、辛いことだろう。
敗戦の痛手を癒すために、特別室で休んでいたようだ。
慌てて抗生物質をご飯に混ぜる。
薬を続ければ、何とかなるだろう。
昨夜、帰宅してみると、ジロちゃんがファイトの部屋で眠っている。
また、具合が悪いのだろうか。
恐る恐る顔を覗いて、「あっ」と息を飲んだ。
右目が真っ白なのだ。
新たにケンカをして目をやられたのか、それとも傷の化膿のためなのか、ともかく痛々しくて見ていられない。
それでも、ご飯を催促するように、身軽に小屋の屋根に飛び乗った。
ほっぺたにピンポン玉のような穴があいたり、毛がほんとど抜けたり、とんでもない重症から信じられない快復を見せてきたジロちゃん。
今回も奇跡的な全快となるといいのだが。
2005/3/9 チビタの食欲は戻った。
大幅な体重の減少は何が原因だったのだろう。
わずか2日の食欲不振ではないはずだ。
そう思って、このところのチビタの行動を思い返してみると、一人でご飯皿と格闘する姿が見られなくなっていたことに気付く。
いくら舌をくり出しても、食べ物はほとんど口の中に入ってはこない。
それでも時間をかければ多少は胃袋に収まっていたのだろう。
栄養補給と自分で食べる意欲を復活させるために、唯一自分一人で食することのできる猫用ミルクをあげることにした。
チビタは、それはそれは喜んだ。
自分で好きなように好きなだけ、そして苦労せずに飲めるミルクは、チビタを満足させた。
そして、いつの間にか、ご飯皿に一人で立ち向かうチビタの姿があった。
2005/3/3 これまで、体調を崩したことのないチビタの具合が悪くなった。
食欲がなく、椅子の下で、じっと蹲っている。
この頃、チビタが随分軽くなったような気がしていただけに、すぐにお医者さんに連れていった。
胃をこわしていて、口の中もただれているという。
案の定、体重もかなり減っていて、3.4キロしかなかった。
一昨日までは、あんなに良く食べていたのに、一体何が原因でこんなに痩せてしまったのだろう。
子猫4匹の出現がストレスになっていたのだろうか。
何があっても変ることのないチビタ……
その胸の内に思いを寄せることを怠っていた。
気が付けば、シマチュウもコエリもレオナも、チビタより大きくなっている。
丸くなって眠るチビタがことさら小さく見え、胸が痛む。
もっと早く気が付いてあげられなくて、ごめんね、チビタ。
2005/2/26 子猫4匹の中で、一番集中してしっかりご飯を食べるのはコエリちゃんだ。
先日、コエリちゃんがドライフードを食べているところに、チビタがやって来た。
チビタの顎では、ドライフードは食べられないのに、誰かがドライフードを食べ始めると、必ずやって来て、食べている猫の顎の下に頭を突っ込む。
それが何の意思表示かはわからないが、食べている側にすれば迷惑千万。
それでも、みんな我慢していた。
ところが、コエリちゃんは、食事の邪魔をするチビタに猫パンチを繰り出した。
それを見ていたニセドが、今度はコエリちゃんを叱りにいった。
日頃、すれ違うたびにチビタに猫パンチするくせに…
そう云えば、ニセドはチビタにご飯の邪魔をされてもパンチしたことがない。
自分で食べることのできないチビタに対する心遣いなのだろうか。
2005/2/22

ニセドやトンちゃんのイジメに、コチコチに身を小さくしていた『らーちゃん』。
おばあちゃんの膝をゴンちゃんと取り合っていた『らーちゃん』。
やさしく撫でてあげると、大きくゴロゴロと喉を鳴らしていた『らーちゃん』。

その『らーちゃん』も、チビタにの他に4匹の子猫に慕われるようになり、ずいぶん様子が変ってきた。
今でも、ニセドやトンちゃんの猫パンチに、身をすくめはするが、もう、おばあちゃんの膝にやって来ることはない。
子猫を抱えて横になる『らーちゃん』をいくら撫でても、もうあのゴロゴロは聞かれない。

『らーちゃん』はすっかり満足し、自信に溢れ、もはや心細さを人に癒してもらう必要などなくなったのだ。
その豹変振りには、唖然とするばかり。
『らーちゃん』にとっては喜ばしいことなのだろうが、いくら撫でても無反応の背中は、やはり寂しい。

2005/2/18

月曜日の朝、いつものように、ご飯と掃除道具を持って、猫たちのもとに向かった。
だが、私を出迎える猫の姿がない。
不審に思いながら、ビルの裏手に回り込んだ。
目に飛び込んできたのは、たくさんの鋼管と厚いビニールに覆われたものものしい機械。
なるほど、こんな恐ろし気な物が現れては、猫たちが出て来るはずがない。
人陰がなかったので、猫たちを呼ぶと、ズレータ、コアネがやってきた。
お皿にドライフードを入れる音に、タマサも顔を出したが、機械が怖いらしく、なかなかこちらに来られずにいる。
ホワイトソックスにいたっては、ビルの隙間から大声でなくばかり。
それでも、ズレータとコアネがドライフードを噛むパリパリという小気味良い音に、残る2匹も覚悟を決めてやってきた。
丁度食事が終わろうとしたころ、工事の人たちが現れた。
ビルの配管工事だそうで、1ヶ月かかるという。
1ヶ月……その内、猫たちも慣れるだろう。

それは、甘い考えだった。
昨日の朝も私を出迎える猫はいなかった。
いつもの食事の場所では、何と、鋼管の切り出しが行われていた。
例のおどろおどろしい機械が、分厚い鋼管を切っていく。
いくら呼んだところで、猫たちが出てこられる状態ではなかった。
唖然と佇む私に、機械の音が止まり、「猫たちなら、この隙間にいるよ」と、中国語訛りの日本語が聞こえた。
気持ちよく席を立ってくれたその人にお礼を言いながら、私は、猫たちのいる隙間にドライフードを放り込むしかなかった。
ベランダから眺めると、入れ代わり立ち代わり、全員が食られた模様。
それでもいささか心配で、昼時に様子を見に行った。
何と何と、子猫3匹が機械の周囲を物珍し気に歩き回り、ズレータに至っては、飛び散っている鉄くずを口にいれているではないか。
薬剤を溶かした、いかにも危険そうな液体が入った入れ物もある。
工事人さんは昼食で出かけているのだ。
これでは、工事の人が戻るまで私が監督しているしかない。
「そんなところに近寄っちゃダメ、危ない!」
「そんなもの食べちゃダメ!」
「ダメ、ダメ、ダメー」

ぴったり1時に戻ってきた工事人さんの話し声に、猫たちは脱兎のごとく、安全な塀の向こうに姿を隠した。
「猫たちが乗ったら、その機械、動いちゃいますか?」
「猫たち、鉄くずを口に入れちゃうんです」
「この液体、毒ですよね」
私は、矢継ぎ早に質問ばかり。
席を立つ時に、多少なりとも安全に気を配ってほしい……
質問の裏側にある私の願いは、届いただろうか。

これからしばらく、お昼の一時間の猫監督は続きそうだ。

2005/2/14 久しぶりにニセドが脱走した。
おばあちゃんが玄関のドアを開けた拍子に飛び出したのだろうが、おばあちゃんは、まったく気付かなかったという。
どれくらいの時間、外にいたのかわからないが、ニセドが、満足のいくまで外の空気を楽しんだことは間違いない。
だが、こんなルール違反を犯したニセドを、他の猫たちは許さなかった。
家に入って来たニセドは、さっそく兄妹たちに取り囲まれた。
兄妹たちは、代わる代わるニセドの臭いを嗅ぐ。
ニセドの体は、憧れの世界の臭いがする。
どうして、ニセドだけ?????
常々外に出たい欲求を抑えている兄妹たちだけに、怒り爆発。
まず宮沢さんがニセドに飛びかかった。
一旦ケンカが始まると、興奮状態は次々に拡がり、それぞれが適当な相手を探して、ケンカを始める。
ニセド以外にケンカの原因などあるはずもないのだが、逃げる、追い掛ける、睨み合う、取っ組み合う。
家をひっくり返したような騒動に、おばあちゃんは掃除機の柄を振り回した。
これには、一同度胆を抜かれたらしく、一件落着。
さんざんな目にあったニセドは、今日になっても他の猫が近寄る度に、
「ハーッ」と威嚇を続けている。
2005/2/11 不思議なことに、健康自慢をするとすぐに体調を崩す。
そんな経験はみなさんにもあるのでは?
このジンクスは、猫にも当てはまるらしい。
前回、猫たちが全員元気、と書いたその晩から、コエリちゃんの具合が悪くなった。
2度目の発情期が終わったばかりで、げっそりしているところに、一昼夜嘔吐し続けた。
ベッドの下やら、押入の奥に入りこみ、身動き一つしない。
いよいよ病院だ、とキャリーの用意をしたが、コエリちゃんは、キャリーを見ただけで何が起ころうとしているかを見てとった。
こちらが近寄る前に猛烈な勢いで逃げる。
捕虫網でもなければ捕まえることは不可能だった。
なす術がなかった。
幸い、翌日の午後から、快復に向かい、今では体力を取り戻そうとするかのように、しっかり食べている。
だが、隠れんぼをするまでになった、私との距離はまたまた拡がってしまった。
トイレに入っていても人の足音にビクつく有り様。
コエリちゃんにとって、Neco家は信用ならない、安心できない場所でしかないのだろうか。
コエリちゃんを捕獲した時に、見事逃げおおせたズレータが、寒空のもとでも、気ままに暮らしているのを見るにつけ、自責の念にかられる。
2005/2/6 1ヶ月掛けて、のんびり18匹の猫の近況を書くつもりだったが、
なんともう2月の6日。
なのに、まだ8匹分しか書けていない。
『正月猫模様』というタイトルでまとめることができなくなった。
以前、54匹の猫と暮らすワカさんが、54匹の写真インデックスを更新するのは一年掛かり、と言っておられたが、なるほど、と頷ける。
大勢の猫がいると、日々心配事が絶えないのだが、今は、全員の健康状態が良好で、猫と暮らす幸せにどっぷり浸かっている。
そうそう、贅沢で深刻な心配事が一つ。
猫モノ蒐集の幅がどんどん拡がってしまっているのだ。
最初は猫トランプ、それがタロットやアンティークに発展。
次ぎが『長ぐつをはいたねこ』モノ。
さらに、今度はルイ(ス)・ウェインが加わった。
知れば欲しい、探し当てればなおさら欲しい。
ああ、でもお財布は一つ………
2005/2/3 『忙しい』という字は、『心を亡くす』と書く。
確かに、そうだ。
毎晩、帰宅した時には夜空を見上げて、
星になった猫たちに「ただいま」と声を掛けていたのに、このところ、それすら忘れていた。
星になった猫たちへの想いが薄れてしまったようで、とても哀しい。

心を亡くしている間にも、着実に時は経つ。
コエリちゃんが、二度目の発情期を迎えた。
このまま避妊できずにいたら、一年に何回この声を聞くことになるのだろう?
2005/1/28 本当に忙しいと、お腹も空かないことが分かった。
その日の仕事をその日に終えられない日が続いていたが、それでもまだまだ余裕があったのだろう。
お腹も空いたし、喉もかわいた。
だが、積もり積もって、ついに切羽詰まった昨日は、分刻みのスケジュールに追い回された。
会社を出て、はじめて、お昼はおろか、水一滴口にしていないことに気付いた。
夕食時も、いつもの食欲が湧いてこない。
ダイエットするなら、これに限る!!
だが、こんなことは長続きするものではない。
一夜明けた今日、仕事はまだまだ山積しているはずなのに、もう緊張がほどけている。
コーヒーを何杯となく飲みながら、お腹がすいたなあ、と思う。

今回の更新は、随分遅れてしまった。
いつしか定期的になった週2回の更新…
宿題が終わらずに夏休み最後の日を迎えたウン十年前を思い出す。
2005/1/22 コエリちゃんの避妊手術の日がやってきた。
コエリちゃんは朝食を抜かなければならない。
ご飯の時間になっても、お皿はからっぽのままだ。
コエリちゃんをキャリーに入れるまで、全員に辛抱してもらおうというわけだ。
待てど暮らせどご飯は出てこない。
それでも、全員、いつもご飯の置かれる場所で、おとなしく待っていた。
そこへキャリーが登場。
みんな、空腹を忘れて、上へ乗ったり、中に入ったり、おおはしゃぎ。
だが、当のコエリちゃんは、キャリーに近寄りもしない。
しばらくして、コエリちゃん捕獲のチャンスが到来した。
床に落ちていたビニールの切れ端を、じっと見つめていたのだ。
ふいを突いて、さっと背中に手を伸ばす。
その瞬間、全身バネのような体を捻り、あっけなく手をすり抜けてしまった。
警戒心の強いコエリちゃんには、これで十分だった。
それから後は、人間と目が合うだけでさっと逃げて行く。
日頃から抱くことのできない猫を、手術当日だけうまく捕まえられるわけがないのだ。
我が家にやって来て、丁度半年。
コエリちゃんはコエリちゃんなりに人間との距離を縮めてきたことは間違いない。
もう少し、コエリちゃんの時間割りに付合おう。
2005/1/17

明日はいよいよコエリちゃんの避妊手術だ。
他の3匹の子猫はとっくに済ませた手術だが、よほど眠い時でない限り指一本触れさせてくれないコエリちゃんだけが、残ってしまった。
避妊手術はおろか、ワクチンの接種もしていない。
こんなコエリちゃんだが、人間に対する興味は3匹の中でダントツだ。
隠れんぼが大好きで、ドアの後ろや階段の曲り角に身を隠した私を、首を伸ばせるだけ伸ばして覗き込む。
サッと場所を変えて隠れると、追い掛けてきて、また首を伸ばす。
一定の距離さえ保っていれば、こうしていつまでも遊んでいる。
最近は、足下で横になるようにもなった。
もちろん、足をわずかに動かしただけで、脱兎のごとく逃げていくのだが。

明日の朝は、きっとコエリちゃんを捕まえることができるだろう。
だが、コエリちゃんを裏切るようで、嫌な気分だ。
せっかく、ようやく、コエリちゃんの緊張がほどけ始めたというのに、またまた恐ろしい思いをさせるのだ。
まだまだ頼りなく細い人間との絆は、ぶちっと切れてしまうのだろうか。

2005/1/14 夜、本とコーヒーを持ってお風呂に入る。
窓を全開にして、大寒の風が流れ込むに任せる。
露天風呂さながらのバスタイムは、私の至福の時だ。
窓の外で、ロッキーママの鈴の音が聞こえる。
声を掛けると、返事をする、がいつもと様子が違う。
返事というより独り言に近い。
独特の抑揚で、長々と呟き続ける。
ピンと来た。獲物を捕って来たのだ。
窓から首を出して、目を凝らすと、案の定、ロッキーママは獲物をくわえていた。
子ネズミだ。
「偉いねえ〜、ロッキーママ。凄いねえ〜」
誉めてはみたものの、得意気に見せにこられてはたまらない。
私は湯舟の中で、窓の閉まっている側に移動して、窓に背を向けた。
最近ネズミ捕りのCMが流れている。
ネズミが東京の街に暗躍しているのだ。
いよいよ猫の出番だろうに、ネズミ捕りを仕掛けつつ、道行く猫に目を光らせ続けるのだろうか。
2005/1/10 今朝、事務所に着くなり、ご飯セットと掃除道具を持って階下に降りると、
道路際で首を長々伸ばしてこちらを見ているタマサとコエリアネが目に飛び込んで来た。
昨日、一昨日より30分遅れての出社だったから、待切れなかったのだろう。
思わず顔をほころばせながら、2匹に挨拶し、裏手に回る通路を見やると、向こうから走って出迎えるもう一匹がいる。
ズレータではない。
ホワイトソックスだった。

人一倍警戒心が強く、毎日ご飯を食べると云っても、しばらくは私の姿が消えた後に限られていた。
やがて、私の気配を感じると、「ぼくもいるよ〜」と塀の陰から声を掛けるようになった。
子猫とは離れたところにご飯皿を置くと、私を横目で見ながら怖る怖る近付き、一口頬張っては走って塀の陰に隠れる、その繰り返しで何とか朝ご飯を胃袋に収めた。
こんな状態が2ヶ月半ほど続いただろうか。
昨年の12月半ば頃から、次第に落ち着いてご飯を食べるようになり、ご飯皿を置く位置もどんどん私に近くなっていった。
年末には、ついに子猫と一緒に、お皿にご飯が盛られるのを待つようになった。
私にはそれで十分だった。
それが何と、今朝は私を出迎えてくれたのだ。
私はもったいないような気持ちになり、「ありがとう」を繰り返した。
ずいぶん時間がかかったが、ホワイトソックスには絶対に必要な時間だったのだろう。
猫によって、人によって、必要とする時間は異なる。
その時間を与えてあげられないことがどれほど多いことか……
子育ても、猫育ても、育てる側が時間割りを作った時点で失敗するのだろう。
2005/1/6 今日が2005年初出勤。
いつもの通り、会社に着くなり、外猫用ご飯セット(ご飯皿とドライフード、猫缶、タオルを入れた袋)と掃除道具を持ってビルの裏手に回った私を、これまた、いつもの通り、外猫トリオが走って出迎えたくれた。
一見何の不思議もない光景なのだが、次ぎの瞬間胸がジーンと熱くなった。

お正月休みもご飯当番に毎日通ったが、時間は決まって午後3時だった。
いつもなら昼寝の真っ最中。
当然初日は、名前を呼ばれてバラバラと集まってくる状態だった。
だが、翌日はズレータが待っていた。
その翌日は、ズレータとコエリアネが待っていた。
そのまた次ぎの日は、ズレータとコエリアネとタマサが待っていた。
ホワイトソックスは、毎回、ご飯皿が置かれる音を聞いて、「ぼくもいるよ〜」とないてから姿を見せた。
休みだった8日間、朝10時にご飯をあげる人はいなかった(はずだ)。
それなのに、今朝10時、外猫トリオは私を待っていた。
ということは、8日の間、毎日欠かさず、10時に私が来るのを今か今かと待っていたことになる。
待人来らず……
でも、外猫トリオは10時のお迎えを止めなかった。
雪の降る寒い暮も、彼らは私を待っていたのだ。
ああ……
2005/1/1

皆様、明けましておめでとうございます。
昨年は、年末のぎりぎりまで、大地震、大津波という地球規模の災害に見舞われ、本当に大変な一年でした。
毎年、『来年こそは……』と言いながら新しい年を迎えているような気がします。
『来年も……』と言えるような年は、一生の間に何回あるのでしょうか。
猫たちは、『来年こそは……』とも『来年も……』とも思わず、淡々とその日を生きているのでしょうね。
そんな生き方が正解なのかもしれません。

この年末年始は、事務所の階下のステーキ屋さんと交替で、外猫の食事当番をすることにしました。
元旦から4日までは私の当番。
29日、大晦日と雪が降り、どうしているか、寒かろうと案じ続けていましたが、今日、いつもの所で名前を呼ぶと、ズレータ、こえりあね、タマサ、ホワイトソックスの順で、変わらぬ元気な顔が集まってきました。
彼等の逞しさが眩しく見えました。

皆様、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。