★★★☆

猫好きに捧げる
ショート・ストーリーズ

1997年11月20日 初版第1刷発行
編者:M・J・ローゼン
訳者:岩本巌他6名
発行所:株式会社国書刊行会
ISBN:4-336-04037-0
C0097

14葉の猫写真に始まる本書には、20名の作者による猫をテーマにした短編小説20編と9ページの漫画が収さめられている。写真家も漫画家も小説家も、アメリカもしくはイギリスで活動。訳者も7名で、ストーリーはもとより、文体も翻訳もバラエティに富んでいる。
猫の物語というと、どうしてもハートで読んでしまい、感情の高まりの中に文学的な受け止め方を忘れてしまいがちだ。その点、本書は、久しぶりに頭で読んだ気がする。自然に胸にしみ入る作品が少なかったのは、『猫』との対峙の仕方が、私のそれとは大きく異なっていたからだろう。『猫好きに捧げる……』というタイトルが付けられていても、猫好きが書いた小説、ということではない。著者それぞれの作家活動の中で生まれた、猫を主要なモチーフとする作品群なのである。だから、猫との距離感がさまざまで、ときに違和感さえ覚えるのだが、猫をみつめる別の視線を知ることにより、猫がより立体的に見えてくるような気もする。ここに収められた短編は、読み返すたびに、違う印象を持つのだろう。


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