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猫さまとぼく

2004年2月24日 第1版発行
著者:岩合光昭
発行所:株式会社岩波書店
定価:1700円(税別)
ISBN4-00-115356-4
C8772

岩波フォト絵本の一冊として子供に向けて書かれたフォト・エッセイ集。

岩合氏が初めて猫を目の前にしたのは、案外遅く、高校生になってから。28匹の猫を飼っている同級生の家を訪ねたときのことだ。友だちが腕に抱いて部屋に入ってきた一匹の猫を見ているうちに、なぜか涙が溢れてきたという。幼い頃にすでにイーラの『85枚の猫』という写真集と衝撃的な出会いをしていた岩合少年も、目の前で同じ空気を吸い、しっかりと自分を見つめ返す生身の猫に、胸の奥深くをぐっと握られたような思いだったのだろう。
本書は、岩合氏が猫に惹かれるようになっていった経緯、初めて一緒に暮らした海ちゃんのこと、そして日本を、世界を旅して出会った猫と彼らを取り巻く人間を写真とともに綴ったものだ。

岩合氏の猫の写真には、いつも人間がいるように思う。猫だけを収めたものにも、そのシャッターを切っている岩合氏の視線と、猫と人間の有り様についての止むことのない問いかけが感じられる。一枚一枚の写真に写し出された猫たちを見ながら、この猫は、人間のどんな視線を待っているのだろう、どんな距離感を求めているのだろう、と考えてみる。それは取もなおさず、自分の生きように対する問いかけだと気付かされる。

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