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★★★★

猫がいてよかった。

2007年4月21日 第1刷発行
著者:高原鉄男
発行所:株式会社友人社
ISBN978-4-946447-44-0
C0095

鉄男』の名は、Cat Lovers の間には広く知れ渡っている。彼の描く、存在感溢れる猫たちは、一度出会うとがっちりと記憶に刻まれてしまう。それまでに歩んだ道程が手にとるように分かる猫たちは、堂々とそこに居る。そんな猫たちが生まれるのは、どの猫も鉄男氏自身が実際に出会った実在の猫だからであり、さらに瞬時に彼らの「生」を汲み取れる鉄男氏の人間性があってのことだろう。鉄男氏の絵を見ていると、人と猫の境などなく、同じ生きるものとしての対等な一対一の会話が聞こえてくる。

そんな個々の会話が一冊の小振りの絵本になった。
猫と人間が作る一瞬を捉えた20のエピソードと絵。その一瞬には、猫と人間双方の生きようが凝縮されている。

その中の一編に、土砂降りの中を鉄男氏の軒下に辿り着き、命を閉じようとする猫の話がある。「旨いものにはありつけたか?」と鉄男氏は尋ねる。最初の一読は、さっさと読み飛ばしてしまったというのに、その一言だけが妙に心に残った。私だったら何と尋ねるのだろう。「お陽さまが、ほっかりあたたかかった日はあった?」こんなところだろうか。人生もまた同じ。「がっぽり儲けたか?」などと聞く人はいないだろうに、人は損得が頭から離れずに日々を生きる。こんなモノサシを掲げることこそ負け組の証だろうに。

あとがきには、鉄男氏が猫の絵を描くようになった経緯が書かれていて、興味深い。

繰り返しページをめくるごとに味の出る一冊だ。


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