2004年７月25日　初版発行
著者：井伏鱒二／大佛次郎／壷井栄　他
発行所：中央公論新社
ISBN4-12-003538-7
C0095

本書は、昭和29年に中央公論社より発行された『猫』という小さな随筆集を底本として、クラフト・エヴィング商會の創作・デザインを加えて再編集されたものだ。猫というとらえどころのない、それでいて人の心の中に大きな存在感を占める生き物に魅せられた、11名の著名人の随筆が集められている。
半世紀の間に、人を取り巻く環境は大きく変わり、人の生きようも心の持ちようも様変わりした。だが、猫は、変わらぬ魅力的な姿と有り様で人の傍に生き、人の胸の内に変わらぬ情をいだかせる。猫は50年前を今に引き寄せてくれる。
旧仮名遣いで書かれた文に、50年という時を感じながら、人も時間も空間も超える猫に対する情を目の当たりにして、改めて猫の持つ力に畏敬の念が湧く。この情は、人が人である限り、猫が猫である限り、変わらないもの、すなわち人間の根っこのところに生まれるのだろう。ゆっくりと味わいたい随筆集である。

著者：有馬頼義／猪熊弦一郎／井伏鱒二／大佛次郎／尾高京子／坂西志保／瀧井孝作／谷崎潤一郎／壷井栄／寺田寅彦／柳田國男／クラフト・エヴィング商會