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ねえ だっこして

2004年5月 初版発行
文:竹下文子
絵:田中清代
発行所:株式会社金の星社
ISBN4-323-07040-3
C8793

わたしは、子猫。お母さんの、あったかでやわらかいお膝は世界一すてきな場所。お母さんのやさしいだっこは世界一幸せな時。でも、あたし、この頃つまらないの。お母さんのお膝に赤ちゃんがいるから。お母さんは、いつも赤ちゃんをだっこしているから……

世界一素敵な場所と時を赤ちゃんに取られてしまった子猫の切ない思いが、見事に描き出された絵本だ。子猫は、妹や弟が生まれて、お姉さん、お兄さんにされてしまった子供たちでもある。
わたしは、もう大きいんだから、と自分に言い聞かせて、一生懸命やせ我慢してみても、やっぱりお母さんが恋しい……、そんなたまらない思いが素直に伝わり、涙がこぼれる。

昔懐かしいノスタルジックな筆致で柔らかく描かれた絵には、ゆったりとした時が流れ、子猫の表情には、淋しさを乗り切ろうと、あれこれ思案する小さな胸の内が見事に表現されている。

こうした子猫たち、子供たちの気持ちを大切に掬いとれるだけの、心の余裕を忘れずにいたい。

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